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  • A STUDY ON JUDGMENT PROCESS WITH CATEGORY SCALES
  • ヒョウテイ シャクド ニヨル ハンダン カテイ ノ ケンキュウ

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抄録

織田は, 評定尺度による判断過程を分析するために, 一連の知覚判断実験を行い, いくつかの法則を明らかにした (1975a, 1975b, 1976a, 1977)。本研究の目的は, これらの法則の質問紙調査における判断過程への適用の可能性を検討することである。この目的を達成するために, 7個の作業仮説がたてられ, 仮説検証のために3種類の質問紙調査が行われた。質問紙調査には「教育の中立性に関する態度 (10項目)」が共通項目として用いられ, 被調査者は1, 024名の大学生および短大生であった。<BR>調査結果の分析によって, 次の結論が得られた。<BR>1. 質問紙調査の判断事態は, 絶対判断事態というよりも, 相対判断ないしそれに類似した判断事態である。<BR>2. 評定尺度に含まれる正 (負) のカテゴリー数の増加に伴ない正 (負) の判断度数が増大することが確認された。従って, 正や負のカテゴリ―数は, 単に判断の精度に影響するのみでなく, 判断次元の心理的連続体上の正, 中性, および, 負の範囲決定に影響する重要な要因である。<BR>3. 織田 (1976a) は, 評定尺度にあてはめられた反応語は,(a) カテゴリー相互間の順序 (上位下位) 関係を規定する機能と,(b) 心理的連続体上におけるカテゴリーの位置づけをする機能をもつことを指摘するとともに, 知覚判断実験においては (a) の機能が強く働らくことを明らかにした。しかし, 本研究によって,(a) 機能は心理的連続体上のきわめて狭い範囲に分布する刺激群の判断事態において強く機能し, 心理的連続体上に広く分布する刺激の判断事態においては (b) 機能が強く機能することが確認された。<BR>4. 織田 (1977) で明らかにされた評定尺度の具備すべき 3条件 (表現的妥当性, 意味強度的妥当性, 系列的妥当性) が評定尺度構成上の重要な条件であること, および, 系列的妥当性に比べて表現的妥当性と意味強度的妥当性がより重要な要件であることが確認された。<BR>一連の評定尺度に関する研究成果をふまえて, 実際に質問紙を作成する上での評定尺度構成上の方針ないし注意事項を列挙すれば, 次の通りである。<BR>1. 尺度作成者は無論のこと被調査者においても相互に十分に意味分化した反応語 (主として程度量副詞) 群が, カテゴリー用語として使用されなければならない (意味強度的妥当性の確保)。<BR>2. カテゴリー用語の配列は, 反応語の内包する意味強度の順序 (心理的な意味順序) に従って配列 (反応語の系列的妥当性) されるとともに, 表現的一貫性 (表現的妥当性) が確保されなければならない。<BR>3. カテゴリー用語の選択に際して, カテゴリー間の心理的距離が等間隔になるように配慮すべきである。しかし, 等間隔にしようとそれほど神経質になる必要はない。<BR>4. 中性カテゴリー「どちらともいえない」の尺度内位置によって, 中性判断が影響を受ける。従って, 中性カテゴリーが尺度の中央にある対称尺度の使用が望ましい。<BR>5. 程度量副詞相互の意味分化水準を考慮に入れると, 対称尺度のカテゴリー数は最大限7段階, 最適カテゴリー数は5段階程度であろう。<BR>6. 質問紙調査においては, 反応語は単なるカテゴリー相互関係の順序関係規定因としてではなく, 判断次元に関する心理的連続体上での位置規定因として機能する。従って, 尺度の両端のカテゴリー用語の決定に際しては細心の注意が払われなければならない6たとえば, 「賛成一反対」次元の尺度構成にあたり, 末端カテゴリー用語として「非常に賛成 (反対) 」を用いるべきか「賛成 (反対) 」を用いるべきかに極めて重要な問題である。

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