上皮性卵巣腫瘍のエストロゲン産生能に関する研究 : エストロゲン産生部位の検討

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  • Estrogen Production in Epithelial Tumors of the Ovary : Localization of Estrogen-synthesizing Cells

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抄録

上皮性卵巣腫瘍を有する閉経患者にしばしばみられる高エストロゲン血症は, 腫瘍発生卵巣の間質に生じたエストロゲン生合成に起因するものであることを, 以下の検討結果より立証した. 1) 腫瘍組織のhomogenateよりエストロゲンとその前駆物質が定量的に抽出され, 腫瘍内において正常卵巣のエストロゲン産生機構と類似した生合成機構が存在することがうかがわれた. しかし抽出されたエストロゲンおよび前駆物質の相互比率は症例ごとに異なり, 腫瘍によつてエストロゲン生合成のPathwayがさまざまであると推定された. 2) 腫瘍組織の凍結切片をズダン染色すると, ズダン強陽性を示す物質が間質内にfine granularに存在するほか, droplet状に存在する部分もあることがわかつた. 3) 抗estrone (E_1), 抗estradiol (E_2), 抗androstenedione, 抗testosterone抗体を用いた酵素抗体法により, 上記ズダン陽性物質がエストロゲンおよびその前駆物質を含むことが確認された. 4) cholesterol染色を行うと, 腫瘍間質内の特定の部分に陽性所見が得られた. また, ^3H-cholesterolを用いたin vitro実験から, 特定の間質細胞においてcholesterolの著明な取込みが認められた. 以上の成績は腫瘍間質においてステロイド生合成が行われていることを暗示するものである. 5) 間質のほか, 腫瘍(上皮)細胞内にもエストロゲンの存在することが示されたが, この細胞にエストロゲンレセプターを有することが多いため, 抽出されたエストロゲンは腫瘍細胞が有するエストロゲンレセプターと結合したものであろうと推察された.

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