小児急性穿孔性虫垂炎の術後合併症の検討 : 特に腹腔内膿瘍と創感染について

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  • Postoperative Complications of Perforated Appendicitis

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抄録

穿孔性小児急性虫垂炎の術後に腹腔内膿瘍や創感染を起こす因子について検討し,若干の文献的考察も含め予防策を論じた.対象は約5年間に当院小児外科で経験した穿孔性虫垂炎50症例とした.性別は男児29例,女児21例,年齢は1歳から15歳までで平均8.1歳であった. 50症例中術後腹腔内膿瘍か創感染を起こした膿瘍形成群は7症例,それら合併症を起こさなかった非形成群は43症例であり,膿瘍形成群の内訳は腹腔内膿瘍4例,創感染3例であった.検討方法として 1)年齢,2)病悩期間,3)術前白血球数,4)術前 CRP値,5)腹水中,膿瘍中菌種,6)術後抗生剤について X^2検定を用いて膿瘍形成因子を検討した.結果は 1)年齢では有意に膿瘍形成の多い年代はなかった.2) 病悩期間が3日以上,術前 CRP 値が20mg/dl 以上の症例で有意に膿瘍形成が認められた.3)腹水中の検出菌としては, E.coli, Streptococcus sp, B. fragilis が多かったが,膿瘍中から検出された菌種に E.coli はなく,B.fragilis のみが有意に膿瘍形成に関与した.これは使用した抗生剤で E.coli の除菌が十分になされたためである. 4) B.fragilis の腹水中検出率は病悩期間が6日以上の患児で有意に多かった. 5) B.fragilis に感受性のある抗生剤でも薬剤間に膿瘍形成において統計学的有意差を認めた.術後膿瘍の予防策として重要なのは適切な抗生剤の選択と腹腔内と創部の十分な物理的,化学的除菌操作である.抗主剤は E.coli と B.fragilis に対して強い抗菌力を持ち,腹腔中への移行に優れているものがよい.

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参考文献 (11)*注記

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