多嚢胞性卵巣に対する経膣超音波ガイド下卵胞穿刺術の排卵誘発促進効果

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  • A Possible Role of Ultrasound-guided Follicular Aspiration in Induction of Ovulation in Patients with Polycystic Ovaries

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抄録

薬剤抵抗性の多嚢胞性卵巣(PCO)に対して経膣超音波ガイド下卵胞穿刺による排卵障害治療の有用性が示されているが, その排卵誘発促進効果を知ることを本研究の目的とした. clomiphene-hMG-hCGを用いた卵巣刺激に抵抗し, 3周期にわたって無排卵であったPCO症例12例を対象とし, hCG投与の7日後に卵胞穿刺術を施行した. 穿刺前後の月経第3周日における血中immunoreactive LH (I-LH), bioactive LH (B-LH), FSH, androstendione (A'dione), testosterone (T), dehydroepiandrosterone sulfate(DHEAS),estrone(E_1),estradiol(E_2),progesterone(P)濃度とLH-RH負荷試験成績を比較し, 穿刺によって起こる排卵との関連性を検討した. 卵胞穿刺前の血中I-LH, B-LH, Tは12.6±1.0mIU/ml, 50.0±4.1mIU/ml, 60.8±7.1ng/dlであったが, 穿刺後の次周期(第1周期)には, それぞれは4.8±0.5mIU/ml, 18.1±2.1mIU/ml, 45.4±5.0ng/dlと有意に低下した(p<0.01). 血中FSH, A'dione, T, DHEAS, E_1, E_2, P濃度についてほ穿刺前後で差を認めなかった. 卵胞穿刺前のLH-RH負荷試験において, LHは過剰反応を示したが, 穿刺後の反応は正常となった. 次に卵胞穿刺施行直後のホルモン動態を検討すると, 血中ゴナドトロピンレベルは有意な変動を示さなかったが, 穿刺後2時間で血中TとE_2の低下が観察された(p<0.001).卵胞穿刺の術後第3周期には, 血中I-LH, B-LH, T濃度は術前のレベルに復した. 卵胞穿刺術後第1周期には対象の83.3%に排卵を認め, 1例が妊娠したが, 術後第3周期の排卵率は55.6%となった. 以上の成績より, 卵胞内容液の吸引除去に伴う血中エストロゲンとアンドロゲンの急激な低下が, LH分泌の正常化の一因である可能性が示唆された. このPCO特有の内分泌学的悪循環の解除が経膣超音波ガイド下卵胞穿刺術の排卵誘発促進機序の一つとして考えられた.

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