糖尿病合併妊娠における網膜症の推移と周産期予後

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  • Retinopathy and Perinatal Outcome in Diabetic Pregnancy

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抄録

糖尿病合併妊娠60症例の周産期予後と網膜症の推移を後方視的に検討し, 網膜症合併症例と細小血管障害のない症例とで比較した. 分娩直前の網膜症の程度から, 正常群(40例), 単純型群(13例), 増殖型群(7例)に分類すると, 妊娠中毒症, 羊水過多症, 帝王切開の発生頻度には差を認めなかった. 分娩直前のグリコヘモグロビン(HbAlc)は3群とも良好であり, それぞれ5.5%, 6.4%, 5.4%であった. 平均出生体重は正常群3,060g, 単純型群2,830g, 増殖型群2,610gであり有意差を認めなかった. 胎児仮死は増殖型群で高率に合併した. 新生児合併症の発生頻度を3群間で比較した結果, 低Apgar値, 低血糖, 黄疸, 高ヘマトクリット血症, 呼吸窮迫症候群, 奇形に関して差を認めなかった. 次に, 妊娠中の網膜症の変化から, 悪化群10例と不変群10例に分け, 網膜症を認めなかった正常群40例と比較した. 糖尿病罹病期間は悪化群9.6年, 不変群9.7年であり, 正常群の3.6年に比し有意差を認めた. 悪化群の中で増殖型に進行した例では妊娠中のHbAlcの変化が大きかった. 一方, 妊娠中毒症の有無と網膜症の悪化との間には関連性はなかった. 網膜症は分娩後, 2例が改善, 4例が悪化した. 経腟分娩試行の有無と分娩後の網膜症の悪化との間に関連性は認めなかった. 妊娠中に網膜症が悪化した群に分娩後も悪化する傾向を認めた. 結論として, 網膜症をもつ糖尿病合併妊娠では, 厳格な血糖管理と周産期管理により, 細小血管障害をもたない糖尿病合併妊娠と同等の母児の予後を得ることが可能である. 併せて網膜症の変化を頻回にmonitorしつつ, 必要に応じて早期の治療を行うことが大切である.

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