子宮動脈血流波形における拡張期切痕(notch)による妊娠中毒症の発症予知に関する検討 : 特にUTAIとしてのnotchの定量化

書誌事項

タイトル別名
  • A Study for Predicting Toxemia of Pregnancy by the Diastolic Notch in Pulsed Doppler Flow Velocity Waveforms of the Uterine Arteries : Quantitative Analysis of the Diastolic Notch as Uterine Arterial Index (UTAI)

この論文をさがす

抄録

妊娠中毒症(以下, 中毒症と略す)症例において, 子宮動脈血流速度波形における拡張期切痕(notch)がしばしば観察される. そこで, notchと中毒症の発症との相関を検討し(後方視的検討), さらに, notchの計測が中毒症の発症予知に対して有用か否かについて検討した(前方視的検討). 血流速度波形の解析は, notchの有無およびnotchを定量的に評価するために独自に導入した子宮動脈指数(UTAI:拡張期最高血流速度/notch部最低血流速度)を用いて行った. さらに, 比較のために従来の指数であるresistance index(RI)ならびにpulsatility index(PI)についても検討した. 1. 後方視的検討: 1989年から1991年の間のハイリスク妊婦115例を含む妊婦153例を対象として, 子宮動脈および胎児の血流速度波形計測を施行した. 153例のうち最終的に中毒症と診断されたのは19例であった. 妊娠24~27週(n=20)および妊娠32~35週(n=48)において, 子宮動脈PI値は, 中毒症発症群では非発症群に比し有意に高値で(p<0.05およびp<0.05), さらに, notchを認める群では認めない群に比し, 有意に高い中毒症発症率を示した(p<0.005およびp<0.0005). 胎児の血流速度波形計測では中毒症発症, 非発症群間に有意差を認めなかった. 2. 前方視的検討: 1991年から1993年の間に当科外来を受診した妊婦387例を対象として, 妊娠16~23週におけるUTAIおよび子宮動脈RIとPIの計測を行い, 中毒症発症に対する予知について検討した. その結果, 胎盤付着側におけるsensitivity(%)とspecificity(%)はUTAI, RI, PIの順にそれぞれ, 70.6, 75.0, 81.3および82.0, 67.4, 71.9であり, UTAIはRIおよびPIと同等の成績でいずれも98%以上の高いnegative predictive valueを示した. しかし, positive predictive valueとefficiencyはUTAIが優れていた(17.6%および81.4%). 子宮動脈の拡張期notchを定量化したUTAIの計測は, 妊娠16~23週という早期における中毒症発症予知に対して有用と考えられた.

収録刊行物

参考文献 (14)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ