妊娠時の高脂血状態におけるリポ蛋白(a)の動態 : 正常妊娠と妊娠中毒症との比較

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  • Changes in Serum Lipoprotein (a) Levels Related to Hyperlipidemia during Pregnancy : Comparing Normal Pregnancy and Toxemia of Pregnancy

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抄録

リポ蛋白(a)(Lp(a))は動脈硬化症の新しい危険因子として注目されており, また血液線溶系に関与する特徴をも有している. 今回我々は正常妊娠症例と妊娠中毒症例について血中総コレステロール(TC), 中性脂肪(TG), リン脂質(PL), 高比重リポ蛋白(HDL)およびLp(a)を測定した. 妊娠時の高脂血状態と妊娠中毒症の脂質代謝異常について検討するとともに, 妊娠時におけるLp(a)の動態を検討し, さらに妊娠中毒症の病態生理とLp(a)との関連を追究した. 1. 正常妊娠32例の分娩時の各脂質およびHDLはすべて高値を示し, 非妊婦と比較しTC:約70%, TG:約200%, PL:約70%の増加を示した. 一方, 妊娠中毒症11例においては正常妊婦よりTCとPL が有意に(p<0.05)低値であり, また有意差はないがTGが高値であり, HDLが低値であった. 2. 正常妊娠33例の分娩時のアポリポ蛋白A-I, A-II, B, C-II, C-III, Eは非妊婦より高値を示した. 一方, 妊娠中毒症例においてアポリポ蛋白C-IIIが32.5±11.0mg/dlと正常妊婦(21.3±7.2mg/dl)より有意に(p<0.005)高値を示した. 3. 妊娠経過中Lp(a)値は妊娠20週まで急激に上昇し妊娠初期の約1.5倍となったがその後は横這いに推移し, 妊娠経過を通じて上昇するTCやTGとは異なる動態を示した. 4. 分娩時のLp(a)値は, 正常妊娠症例:18.1±27.5mg/dlに対し妊娠中毒症例:17.8±17.9mg/d1であり, 各症例間に有意差は認めなかった. 以上の結果から, 妊娠時の高脂血状態において, Lp (a)代謝は脂質やほかのリポ蛋白とは異なる制御を受けることが示唆された. 一方, 妊娠中毒症において脂質代謝異常が存在するが, その病態とLp(a)との関連についてはさらに検討する必要があると考えられた.

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