子宮体癌患者における重複癌および家系内癌集積の検討

書誌事項

タイトル別名
  • Incidence of Synchronous or Metachronous Multiple Primary Cancers and Aggregation of Cancers in Families of Patients with Endometrial Cancer

この論文をさがす

抄録

筑波大学附属病院産婦人科で治療した子宮体癌 (以下, 体癌と略す) 142例について, 同時性又は異時性重複癌, 遺伝性又は家族性癌, 家系内の癌患者集積の実態を調べた。遺伝性癌, 家族性癌の判定は, 遺伝性非腺腫症性大腸癌 (Hereditary nonpolyposis colorectal cancer: HNPCC, Lynch症候群) の診断基準を参考にした。1. 6例 (4.2%) が同時性重複癌であった。合併していた癌は大腸癌4例, 子宮頚癌2例であった。2. 11例 (7.7%) は, 他臓器癌発症から2~12年後に体癌が発見された。他臓器癌は乳癌8例 (うち3例はTamoxifen服用後), 大腸癌2例, 子宮頚癌1例で, 乳癌既往後の体癌の発生率は統計学的に有意に高率であった。11例中2例は閉経前の症例で, ともに検診で発見された。3. 4例 (2.8%) は, 体癌発症の3~9年後に他臓器癌 (二次癌) が発見された。他臓器癌の内訳は乳癌, 大腸癌, 胆嚢癌, 胃平滑筋肉腫で, 検診で発見されたのは1例のみ (大腸癌) であった。4. 遺伝性癌と判定されたのは1例 (0.7%) で, この症例の家系はHNPCCの診断基準を満たしていた。家族性癌と判定されたのは5例 (3.5%) であった。5. 53例 (37.3%) の家系内に86人の癌患者を認めた。胃癌 (34人) が最多で, 次いで大腸癌, 乳癌, 肝臓癌が各々9人であった。以上の結果より, 約15%の体癌は同時性又は異時性重複癌であり, 他臓器癌の合併は大腸癌が, 先に発症した他臓器癌は乳癌が多いことが判明した。他臓器癌, 特に乳癌の既往者は体癌のハイ・リスク群であり, follow upに際し体癌検診を積極的に行うべきである。近年, Lynch症候群2型において大腸癌に次いで頻度の高い癌として体癌が注目されているが, 我が国の体癌患者の家系における大腸癌を初めとした他臓器癌集積の実態はよくわかっていない。体癌患者について, 詳細な家族歴および既往歴の聴取が重要である。

収録刊行物

被引用文献 (4)*注記

もっと見る

参考文献 (15)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ