妊娠および分娩後の子宮の神経の形態学的変化 : ラットとヒトにおける組織化学的および電子顕微鏡的観察

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  • Changes in the Innervation of the Uterus during Pregnancy and following Parturition : Histochemical and Electron Microscopic Observations in Rat and Man

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抄録

子宮の神経の妊娠および分娩後の変化を, ラットについて経時的に組織化学的ないし電子顕微鏡的に検索した. またヒト妊娠子宮についても観察し, 以下の結果を得た. 1. 卵管角部を除くラット子宮角筋層に分布するadrenergicな神経のカテコールアミン(CA)螢光は, 胎芽着床部から減弱し始め, 次第に周囲へ拡がり, 分娩直後では, 子宮間膜を含め子宮角全体の螢光はほぼ完全に消失した. 2. 分娩後, 普通に哺乳を継続したラットでは, 約1カ月後に螢光はほぼ非妊時に復したのに反し, 分娩直後に新生仔を親から分離し, 哺乳しなかつたものでは, 回復は著しく遅延し約3カ月間を要した. 3. ラット子宮のcholinergicな神経のアセチルコリンエステラーゼ(AChE)酵素活性は, 妊娠により明らかに低下した. 4. 微細構造上, 妊娠初期(P7), 中期(P12), 後期(P17)いずれの時期においても, 軸索の腫大, 軸索形質の凝集, ミトコンドリアの破壊などを示す変性軸索を認め, 成熟処女ラット子宮ではこれら顕著な変性所見はみられなかつた. 5. ヒトでは, 妊娠により子宮体部筋層のadrenergicな神経の分布は疎となるが, 妊娠末期例でもなお比較的強い螢光を発する線維もときに観察された. 以上より, ラット子宮の神経, とくに少なくともadrenergicな神経の多くは, 妊娠・分娩・産褥経過を通じて変性と再生を受けるが, これらの過程に胎盤からの局所的な体液性因子と同時に, 哺乳の有無により影響される, いわば全身的な内分泌環境などが関与することが示唆された.

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