ヒト精子細胞膜から分離した精子付着抗原の同定とその物理化学的性質

書誌事項

タイトル別名
  • Identification and Characterization of a Human Sperm Coating Antigen Isolated from Sperm Cell Membrane

この論文をさがす

抄録

我々はヒト精子・精漿・乳汁に共通な新しい精子細胞膜抗原を分離同定した. ヒト精子細胞膜を非イオン化洗剤(Renex 30)にて溶解後, 更にレクチン親和性の糖蛋白成分を分離した. ^<125>Iで標識した精子細胞膜糖蛋白成分の中で抗ヒト精漿家兎抗血清と反応する蛋白分画をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)にて解析した. その結果, 家兎抗血清は分子量12,000の単一ポリペプタイドと特異的に結合した. この精子細胞膜抗原と家兎抗血清との直接結合反応に対する阻止反応を用いて, 抗原の臓器組織分布ならびに物理化学的性質について解析を行い以下の結論を得た. 1) 本抗原は精子・精漿・乳汁及び男子性腺の一部に特異的に存在した. しかしその他の臓器組織(脳・心臓・肝臓・脾臓・腎臓・血清)には抗原活性が全く認められなかつた. 2) 抗原活性は精漿中に最も強く認められた. 精漿中の抗原活性の個人差を検討したところ, 無精子症精漿の方が正常男性の精漿より抗原活性が強く認められた. 3) 乳汁中の抗原活性については, 初乳の抗原活性の方が成乳の抗原活性に比べて極めて強く, 20倍から180倍にも認められた. 4) 精漿中では, 本抗原は分子量約50,000の物質として存在していた. 5) 本抗原は熱処理や酸, アルカリ, 蛋白変性剤等の処理に対して極めて安定していた. 6) 我々の同定した抗原は既知の精子付着抗原であるlactoferrin, 及びferrisplanと組織分布等で類似していたが, 分子量の点で全く異なつていた. 我への抗原はまたlactoferrinやferrisplanと交叉反応を示さなかつた. 従つて今回同定した精子細胞膜抗原は新種の精子付着抗原といえる.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ