ヒト血漿の長時間incubationにより生じる昇圧物質の生化学的性状と, 妊娠高血圧患者における意義

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  • Some Properties of a Vasopressor Substance Generated in Human Plasma by Incubation, and its Clinical Significance in Pregnancy-induced Hypertension

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抄録

ヒト血漿を37℃で長時間incubationすると,activepressorprinciple(APP)とよばれるheatstableな昇圧物質が生じてくる事が知られている.節遮断薬投与下の麻酔ラットの観血的な頚動脈圧測定法を用いたbioassayにより,APPの生化学的性状と,妊娠高血圧患者における意義とを検討した.1)Incubationした血漿より,APPは,chloroform:methano1混合液で抽出不能であった.血漿蛋白の硫安分画により,APPは,硫安濃度50~70%で沈殿した.また,血漿のPronase処理により,昇圧活性はほぼ消失した.即ちAPPは,蛋白としての挙動を示す.2)Incubationした血漿を100℃,5分間熱処理し,1%トリクロル酢酸加96%エタノール溶液で抽出すると,蛋白量当りの昇圧活性は約20倍に上昇した(活性画分と命名).この活性画分も,Pronase処理で昇圧活性が消失した.また,この活性画分をSephacryl S-300を用いてゲル濾過を行なうと,分子量約68,000の分画に昇圧活性が存在した.3)血漿をserine protease inhibitorであるDFPの存在下にincubationすると,昇圧活性は生じてこなかった.4)Captopri1処理ラットに,incubationした血漿を投与しても,昇圧活性は阻害されなかった.即ち,APPはreninではない事が示唆された.5)48時間incubationした血漿を用いて昇圧活性を比較すると,非妊婦に比し,妊娠後期婦人の血漿では有意に高値であるが,妊娠高血圧婦人では,正常妊娠後期におけるより,有意に低値であった.以上の結果は,APPは既知の何如なる物質とも異なる昇圧物質であり,serine proteaseの作用により,血漿中で生成される事,即ち,prorenin-renin-angiotensin系とは異なる酵素系が,ヒト血中に存在する事を意味する.またAPPは,妊娠高血圧患者の血圧調節機構に,代償的機序で関与していると考えられる.

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