胎児肺成熟と羊水飽和レシチン濃度 : とくに診断的信頼性について

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  • Correlation between Disaturated Phosphatidylcholine in Amniotic Fluid and Fetal Lung Maturation

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抄録

過去8年間に胎児の肺成熟または他の検査のため経腹的あるいは経膣的に採取された羊水562検体について飽和レシチン(DSPC)濃度を測定した.そのうち羊水過多症や児に重症な奇形が認められず, かつ強度の血液あるいは胎便の汚染がない羊水は528検体であった.また羊水の採取から分娩までの期間が72時間以内のものは396検体であり, これらの羊水は胎児肺成熟の診断的信頼性の検討のために使用した.DSPC濃度の測定はMason et al. の方法により, レシチン・スフィンゴミエリン比(L/S比)の測定は薄層クロマトグラフィーの二次元展開により行なった.その結果, 羊水DSPC濃度は妊娠の進行とともに増加するが, とくに妊娠36週からの上昇が著しく, 出生体重との関係では2,500g前後からの上昇が顕著であった.この関係は非合併症妊娠例においても同様であった.妊娠35週以前でDSPC濃度が5.0mg/dl以上の高値を示すものの約70%は切迫早産, PROMまたは頚管不全症から早産に至った症例であった.DSPC濃度とL/S比が同時に測定しえ, かつ合併症のない羊水58検体のうち両者が同時に未熟値あるいは成熟値を示したものは47検体であって81%の合致率が得られた.羊水DSPC濃度と肺成熟との関係ではDSPCが未熟値(1.0mg/dl未満)を示す場合(negative)のRDSの診断率は45%(27/60)と低率であっが, 成熟値を示す場合(positive)のnoRDSの診断率は99.4%(334/336)できわめて良好な成績であった.羊水採取から分娩までの期間が24時間以内の羊水との比較では診断率の僅かな改善がみられたが統計的有意差は認められず, これは24時間以内の羊水が全体の約80%を占めていたためと考えられた.また肺成熟の基準値が0.5mg/dlの場合, RDSの予知率の向上はみられたが, RDS児の正診率(sensitivity)およびnoRDSの予知率の有意な低下が認められ, 羊水DSPC濃度の肺成熟に対する基準値は1.0mg/dlが適当と考えられた.なお糖尿病合併妊娠10例(RDS1例)においてはfalse negative, positiveの発生は1例もみられなかった.

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