ヒト子宮体部内膜型腺癌におけるGlutathione S-transferaseπの免疫組織学的研究

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  • An Immunohistological Study on Expression of Glutathione S-transferase π (Form) in Human Endometrial Carcinoma

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抄録

腫瘍の薬剤耐性機構の一つとして, また, 腫瘍マーカーとしても研究されているGlutathione S-transferaseπ(GST-π)について子宮体癌患者の手術標本を用いGST-πの腫瘍組織中での発現を免疫組織学的に検討した. 対象は無作為に選出された組織標本のある子宮体癌で, その内訳は, 内膜型腺癌82例, 腺癌部分が内膜型である腺棘細胞癌6例, 腺扁平上皮癌4例, 子宮内膜異型増殖症3例, 計95例である. これらの標本についてGST-πの発現と組織分化度との関連を検討した. 染色性はその程度により染色度0~3に分類した. その結果, 内膜型腺癌は82例中50例が染色度3, 11例が染色度2, 16例が染色度1, 5例が染色度0であった. 腺棘細胞癌は6例中5例が染色度3で1例が染色度1, 腺扁平上皮癌は4例中3例が染色度3, 1例は染色度1であった. 子宮内膜異型増殖症は3例中1例が染色度3, 2例が染色度1であった. 分化度別のGST-π陽性率は子宮内膜異型増殖症を除く92例で検討し, 高分化型64例では染色度0~3がそれぞれ0, 7, 7, 50例と染色性が高かったのに対し, 低分化型11例では染色度0~3がそれぞれ4, 5, 1, 1例と染色性が低く, 高分化なほどGST-πの発現頻度が高く染色性も高いという結果であった. これらの結果を卵巣原発の類内膜腺癌例でのGST-πの発現と比較したところ, 卵巣類内膜腺癌13例では染色度0~3がそれぞれ1, 6, 3, 3例であり, 子宮体部内膜型腺癌に比較して染色性は低かった. また, 卵巣類内膜腺癌では分化度と染色性の間に関連はなかった. 以上のように, 卵巣癌に比較して化学療法に抵抗性の子宮体癌でGST-πの染色性が高かったことから, 子宮体癌の抗癌剤耐性にGST-πが関与している可能性が示唆された.

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