DNA多型解析およびFISH法を用いた胞状奇胎の診断

書誌事項

タイトル別名
  • Genetic Study of Hydatidiform Mole by DNA Polymorphism and Fluorescence in Situ Hybridization

この論文をさがす

抄録

DNA多型解析, 染色体分析およびfluorescence in situ hybridization (FISH)法を用いて胞状奇胎(奇胎)の雄核発生の解析を行い, それらの結果と肉眼的診断, 病理組織学的診断との比較検討を行った. 対象および方法: 広島大学医学部附属病院および関連施設で奇胎と診断された25例を対象とした. DNA多型解析は奇胎組織および両親の血液からDNAを抽出し, 4種類のDNAプローブ; D1S7(MS1), D7S21(MS31), D12S11(MS43a), D7S22(g3)を用いてvariable number of tandem repeats (VNTR)の解析を行った. 染色体分析は奇胎細胞を培養した後スライドグラス上に固定し, G分染法で行った. また, FISH法はOncor社製のDNAプローブ, DXZ1 (ジゴキシゲニン標識), DYZ1 (ビオチン標識)を同時に用いたdual-color法で行った. 成績: DNA多型解析では25例中20例が雄核発生の全胞状奇胎(全奇胎)で, うち17例はホモ奇胎, 3例はヘテロ奇胎と診断された. また, 残る5例は部分胞状奇胎(部分奇胎) と診断され, うち3例は2精子受精による3倍体, 2例は通常の受精による妊卵からの発生とされた. FISH法を行った23例中17例がXX, 3例がXY, 2例がXXY, 1例がXXXと判定され, この結果はすべてDNA多型解析の結果や核型分析の結果に矛盾しなかった. 実体顕微鏡下観察による肉眼的診断はDNA多型解析や染色体分析による診断結果と完全に一致したが, 病理組織学的診断は24例中8例(33%)でDNA多型解析による診断結果と一致しなかった. 結論: VNTRを用いたDNA多型解析ならびにFISH法は全奇胎および部分奇胎の診断あるいは両者の鑑別に非常に有用であることが示された. また, 全奇胎と部分奇胎の鑑別は実体顕微鏡下の観察により可能であるが, 病理組織学的診断ではかえって不明確になることが示唆された.

収録刊行物

参考文献 (20)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ