胎児(仔)における甲状腺ホルモン末梢代謝の特徴

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  • Thyroxine Deiodination in the Fetus

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抄録

胎児(仔)での甲状腺ホルモン末梢代謝を調べるため,妊娠後期の日本芝ヤギを用い,母仔各10例より肝臓と腎臓を易咄し,25%ホモジネートを作成した。これをDTT添加群と非添加群に分け,それぞれに約1μCiの放射能をもつ,outer ringに^<125>Iを標識したT_4,rT_3あるいはimerringに^<125>Iを標識したT_4を加えて,37℃,room airの条件下で,15分,30分,60分,120分問のインクベーションを行った.インクベーション終了後,ホモジネートは一定期間凍結保存した.ホモジネートの抽出は,解凍後直ちにエタノールを用いて行い,TLCにより^<125>I-compoundsを分離同定し,それらの産生率およびT_4,rT_3の分解率を放射能測定により検討した.その結果,以下のことが明らかとなった.妊娠後期の胎仔腎では,母体に比較して,T_4からのT_3産生,rT_3からの3,3'-T_2産生という5'-ヨード反応の活性は低く,T_4からのrT_3産生という5-脱ヨード反応の活性は高いことがわかった.一方,胎仔肝では,5'-脱ヨード反応によるT_4からのT_3産生とrT_3からの3,3'-T_2。産生は母体と同程度に高く,5-脱ヨード反応によるT_4からのrT_3産生は母体より低いことが認められた.また,cofactorであるDTTの添加は以上の結果のいずれにもほとんど影響を与えたかった.これは,胎仔肝・腎の代謝の差がcofactorによるのではなく,脱ヨード酵素そのものの発現時期が両臓器で異なることによることを示唆する事実である.肝臓と腎臓は甲状腺ホルモン末梢代謝に密接に関与する臓器であるから,ここでの脱ヨード酵素発現の差は,胎仔における甲状腺ホルモン末梢代謝を特徴づけるのに重要な役割を果しているものと思われる.

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