胎盤基底板の超微形態学的研究

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タイトル別名
  • An Ultrafine Structural Investigation of Placental Basal Plate Eisuke KAWAGUCHI

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抄録

妊娠維持機構の一端を解明するため,妊娠7~9週のヒトの胎盤付着絨毛先端部に存在するトロホブラスト細胞柱(ト細胞柱と略)より母児双方の組織が混在する胎盤基底板,さらに子宮筋層に至る部位を対象に,トロホブラスト(Tr細胞と略)分化,浸潤トロホブラスト(invasive trophoblast)と脱落膜細胞との相関,母体側免疫応答細胞の浸潤とフィブリノイド形成との意義について,光顕および電顕学的に検索し次の如き成績を得た.1)ト細胞柱内側ではcytotrophoblast(C細胞と略)およびsyncytium(S細胞と略)は絨毛部トロホブラストと比較し未分化であり,細胞内小器官が少ない,また外側からトロホブラスト細胞殻(ト細胞殻と略)に至る部位では,C細胞は形態学的にも浸潤トロホブラストヘの分化を推定する細胞内小器官の発達をみ,micro且1amentを核周囲にもち,一部のものでは細胞質全体にこれら所見を認める.一方,細胞間は離開しデスモゾーム結合のみで接し,細胞間に母体血成分を認める.2)フィブリノイド層に侵入したTr細胞は外観がアメーバ状を呈し,細胞質よりの突起を多数認め,その先端まで束状micrfilamentをみる.また変性したTr細胞をみ,それらの細胞周囲にフィブリソ,フィブリノーゲン,膠原線維,celldebris,グリコーゲン様穎粒がみられ,さらに母体側免疫応答細胞のマクロファージ,リンパ球,好中球を認める.3)脱落膜組織内へ侵入したTr細胞はほぼ円形を呈し,非常に発達した細胞内小器官をみるが,一部のものでは脱落膜血管内へ侵入し内皮細胞と置換し,またその一部で多核巨細胞を認める.したがって以上の所見から,C細胞は絨毛形成にあずかる一方,母体組織内への侵入が旺盛であり,他方これに対して母体の免疫学的防禦機構が働き,両者のbattle zoneとなり,その結果フィブリノイド層が形成されるものと推定する.

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