子宮頚癌発生過程におけるEGF受容体の発現に関する免疫組織化学的研究

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  • Immunohistochemical Studies on Epidermal Growth Factor Receptor in Oncogenesis of Uterine Cervical Cancer

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抄録

子宮頚癌(頚癌)発生に関わるinitiator, promotorの解明は重要な命題である. そこで癌遺伝子erb-Bの産物に相同性を持つEpidermal Growth Factor (EGF)受容体(EGF-R)に着目し, その頚癌発生・進展に伴う発現態度を免疫組織化学的に検討した. 対象として生検, 円錐切除, 手術標本を用い, 前癌, 初期癌, 浸潤癌および転移癌組織に対し抗EGF-R モノクローナル抗体を一次抗体として酵素抗体ABC法を行つた. 頚癌発生過程におけるEGF-R発現率は, 軽度異形成36%(5/14), 中等度異形成57%(8/14), 高度異形成77%(10/13), 上皮内癌82%(9/11), 微小浸潤癌80%(4/5), 浸潤癌(扁平上皮癌) 24%(5/21)であり, 初期癌形成過程で増加し浸潤癌では逆に低下した. また腺異形成67%(4/6), 腺上皮内癌75%(3/4), 浸潤腺癌8%(1/12)で, 腺癌でも同様の傾向がみられた. 腺癌・扁平上皮癌混合型では33%(3/9)であつた. 骨盤リンパ節への転移癌では21%(3/14)であり, 転移形成に伴うEGF-R発現率の増加はみられなかつた. 一方最高10年間追跡し得た異形成症例でのEGF-R発現率は, regress群0%(0/5), persistent群62%(8/13), progress群80%(8/10)であり, 進行例において高い傾向がみられた. 浸潤癌ではEGF-Rは主に大細胞非角化型肩平上皮癌に発現し, 腺癌・扁平上皮癌混合型でも扁平上皮癌部分に陽性となつた. その発現率は進行期やリンパ節転移の有無とは明らかな関連性はなかつた. 以上からEGF-Rの組織内発現は, 頚癌の発生, 浸潤, 転移形成過程の中では初期癌の形成に最も重要な役割を果たすものと推察された. さらにEGF-Rが前癌病変の進行を推定するマーカーとしても用い得る可能性が示唆された.

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