富士市学童気管支喘息の臨床像に関する研究

書誌事項

タイトル別名
  • A Study on Clinical Features of Bronchial Asthma in School Children in Fuji City, Shizuoka Prefecture
  • フジシ ガクドウ キカンシ ゼンソク ノ リンショウゾウ ニカンスルケンキュウ

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抄録

汚染度の異なる富士市および隣接地区に居住する学童を対象とし, 昭和43年より昭和45年までの検診を実施し, 臨床的に気管支喘息と確診し, そのうち当市で発病をみた163名の患児の臨床像を分析し, とくに大気汚染との関係について検討した.得られた結果は次の如く要約される.1)男児に多発している(3地区).2)汚染の異なる3地区での患児の個人・家族アレルギー歴の頻度は, 地区の間に差がなく, かつそれは非喘息児のそれより高い.3)発病年令の集中性が存在し, 高汚染地区ではその年令がやや幼若(2才まで)に傾いている.4)発作好発季節には季節重積性がみられ, 秋季に多い.高汚染地区では冬季頻発が注目された.5)好酸球の増多は, 末梢血, 鼻汁, 喀痰中にみられた.6)methacholineに対する気道過敏性は, 3地区の患児で等しく存在し, 全体での平均減少率は34.1%, 陽性率は86.9%であった.7)市販吸入性抗原の陽性率は一般に低いが, 自家house dust, マツ, 一部の真菌に対する反応が注目された.8)各地区での免疫グロブリンは, 高汚染地区児のIgGが低値の傾向にあった, IgEに関しては, 半数に700unit/mlをこえる高値が証明された.以上の臨床的観察より, 富士市汚染地区でその発生頻度の増加が憂慮されている小児の気管支喘息は, 素因を基盤とし, アレルギー反応が深く関与して発病したものと考えられ, したがって, 今後これら患児の取り扱いはこの観点に立って実施すべきであろう.

収録刊行物

  • アレルギー

    アレルギー 24 (7), 562-576,585-58, 1975

    一般社団法人 日本アレルギー学会

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