パルスフォトメトリによる無侵襲ヘモグロビン計測技術

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抄録

〔背景〕血液中のヘモグロビンは酸素を組織に運ぶ重要な働きを持つ.ヘモグロビンが減少した状態を貧血といい,その原因は,(1)偏食や消化器疾患などに起因する鉄吸収減少,(2)成長期や妊娠時の鉄需要高進,(3)月経や消化器出血による鉄損失の増加,などである.ヘモグロビンが低下すると頻脈,動悸,頭痛立ちくらみなど日常生活に支障を来し,極度に低下すると心不全症状を呈する.原因が癌などの悪性疾患による消化管出血の場合もあるため,早期に発見し治療する必要があるが,現在ヘモグロビン濃度を測定するためには採血が必要であり,安価で簡単に行える検査とは言えない.ヘモグロビン濃度の無侵襲計測法は,学童の集団検診,一般開業医でのスクリーニング,救急現場での出血の確認,手術中の連続モニタなどに有用と考え,パルスオキシメトリの原理を応用した無侵襲計測技術を開発した.〔方法〕660,805,940,l,300nmの4波長のLEDが入った指プローブを作成した.健常者33人,手術患者25人で脈波を測定し,同時に採血した血液のヘモグロビン濃度をCo-oximeterで測定した.測定した脈波から各波長間の減光度比を計算し,パルスオキシメータの原理を使いヘモグロビン濃度を計算した.〔結果〕パルスオキシメータの原理で測定した無侵襲法と採血法とのヘモグロビン濃度の差はO±1.09g/dl(mean±SD)と,両者は良く一致した.〔結論〕指先にプローブを付けるだけで,採血せずに痛みを与えること無く簡単に血液中のヘモグロビン濃度を連続的に測定する技術を開発した.学童検診など採血が困難な場での貧血のスクリーニングや,手術中モニタとしての応用が期待される.

収録刊行物

  • 医科器械学

    医科器械学 73 (4), 207-, 2003-04-01

    一般社団法人 日本医療機器学会

被引用文献 (1)*注記

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