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Abstract
動詞の否定疑問形シナイカを述語にもつ文が,はたらきかけをあらわす条件と,シナイカによって表現される〈すすめ〉という意味について考察した。シナイカを述語にもつ文は,(1)動詞が意志的な動詞である (2)動作主体が2人称あるいは1・2人称である (3)動詞が完成相非過去形である (4)ノダや,打消し成分と呼応する副詞(まだ・全然等)をともなわない,という文法的条件をみたしたとき,はたらきかけ文へ移行する。この他,はたらきかける行為が未実現である・話し手がその行為の実現を望んでいる等の語用論的条件も必要である。条件をみたしたシナイカは,動作主体が1・2人称のときに〈勧誘〉,動作主体が2人称のときに弱い〈命令〉をあらわす。後者の〈命令〉は,聞き手に利益がある場面・文脈において,〈すすめ〉の意味を実現する。つまり,シナイカによる〈すすめ〉は,語用論的な条件に依存した意味であると考える。〈すすめ〉とは,聞き手利益という特徴をもつはたらきかけであり,話し手が聞き手に利益や権利を提供する「申し出型すすめ」(例 どうぞお座りください)と,聞き手に利益があると判断した行為をはたらきかける「助言型すすめ」(例 早く帰った方がいい)とに大別できる。前者は,聞き手利益の場面という語用論的条件が必要である。シナイカが〈すすめ〉をあらわすときは,「申し出型すすめ」であることが多い。また,聞き手に利益がない例もみられることから,シナイカによるはたらきかけは,もともと利益に無関心であって,言語外の要因によって〈すすめ〉の意味を実現していると考える。また,シナイカによるはたらきかけは,話し手がなんらかの形でその動作に関わる(所有物の提供・手助け等)という特徴をもち,聞き手だけで自己完結する動作は,はたらきかけにくい。シナイカのこのような特徴が,「申し出型すすめ」という意味につながるのだと考える。
Journal
- Kokugogaku : studies in the Japanese language [List of Volumes]
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Kokugogaku : studies in the Japanese language 52(3), 88, 2001-09-29 [Table of Contents]
The Society of Japanese Linguistics