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Abstract
幕末から明治初期にかけて,西欧文化との接触や文明開化の影響によって数多くの新しい単語が生じた結果,日本語の語彙はその基本的な部分にまで大きな変動がもたらされた。この研究は,そのような語彙の中でも特に学術分野の専門用語の一般化の過程をとりあげ,明治から現代までの各種メディアにおける変遷を主に計量的手法によって明らかにしょうと試みたものである。まず,明治初期に『哲学字彙』で採用された「学術漢語」を雑誌・新聞・テレビといった現代メディアの語彙調査の結果と対照させた結果,高い頻度で使用されている「学術漢語」は比較的共通している。最も高い使用率の階級にはそれほど多くはなく,次のランクの「比較的高い使用率の階級」を支えているという傾向がみられた。次に,「学術漢語」の史的変遷を,1906年から1976年までの雑誌『中央公論』の語彙調査の結果と対照させて分析した。「学術漢語」の出現の仕方は,構造的にはどの年度も非常な偏りがなく比較的似た分布になっており,どの年も互いに連関性がある。しかしその類似性は均一ではなく,標本の間の年差が小さければ類似度が高く,年差がひらくにつれわずかずつ類似度が低くなっていくといえる。一方「郵便報知」(1877-88)と「太陽」(1901)では,前者に使用されていない「学術漢語」が多数後者にみられた。また,前者から後者への用語の変動がかなりみられるところから,この時期が「学術漢語」の入れ替わりが著しい時期であったと推定される。外国語辞書などにおける調査と今回の調査結果とを考え合わせると,『哲学字彙』の「学術漢語」は出版当時は抽象性の高い専門用語として紹介され,明治初期から急激に一般化が進むが,1900年前後からその速度が緩やかになり,使用される語が限定されていく一方で広く一般に定着し,現代語彙の中核をなすに至ったのではないかと考えられる。
Journal
- Kokugogaku : studies in the Japanese language [List of Volumes]
-
Kokugogaku : studies in the Japanese language 52(3), 90-91, 2001-09-29 [Table of Contents]
The Society of Japanese Linguistics