ヒメムツアシガニLambdophallus anfractus Rathbun(エンコウガニ科)の幼生の人工飼育による観察

書誌事項

タイトル別名
  • On the larval development of Lambdophallus anfractus Rathbun(Goneplacidae, Hexapodinae)

抄録

1.この研究はムツアシガニが,発生過程のどの時期に,3対の歩脚をもつようにたるかを知ることが目的である。2.研究の材料として使ったムツアシガニは,有明海の干潟に生息するトゲイカリナマコと共生生活をしている。3.このカニの幼生,ゾエア,メガロパが,幼カニに発育するまでの経過を人工飼育によって観察した。4.この研究で,ヒメムツアシガニの,第1期〜第3期ゾエアとそれに続くメガロパ期,幼カニ期の発達段階が明らかにされた。5.ヒメムツアシガニの産卵からふ化まで約1ケ月を要し,上記のそれぞれの段階に達するまでの期日はそれぞれ約1週間の日数である。6.第二期ゾエア期において3対の歩脚の原基が出現し,歩脚の数はこの時期において決定する。ゾエアの特徴 頭胸甲には前頭棘と後頭棘各1棘ずつ,側棘1対,第1,第2触角,大顎,第1・第2小顎,第1〜第3顎脚などすべての附属肢が出現する。顎脚外肢の遊泳毛の数は発育に伴って,4・6・8本と増加する。腹部は6節より成り第1節背面には湾曲した1棘と,第5節の側面に長くのびた1対の腹棘がある。尾節は2叉して長くのび,第5節に似ている。この内側に3対の刺毛が見られる。第二期ゾエアから,鯉,胸脚(鉗脚1対と歩脚3対)および腹肢の原基が出現する。メガロパの特徴 頭胸甲はその輪廓が円形である。額には3個の歯があり,中央の1歯は先端が丸く前方に突出し左右の歯は斜め前方に長く突出して尖っている。鰓域にはゾエア期の側棘の痕跡が残る。心域から後頭棘がのびている。第1・第2触角,大顎,第1・第2小顎,第1〜第3顎脚などそれぞれ1対ずつある。ゾエア期で原基であった胸脚は鉗脚や歩脚としての機能をもつようになる。腹部は6節あり,遊泳脚としての機能をもつ4対の腹肢が見られる。幼ガニの特徴 甲殻は輪廓が梯形で円く背面はふくれている。額域や胃域や心域には小さい顆粒がある。鉗脚は左右等大で掌節には短毛や顆粒をそなえている。歩脚は3対あり,長毛を列に生じている。腹部は6節より成り,不完全にたたまれている。

収録刊行物

  • 甲殻類の研究

    甲殻類の研究 4.5 (0), 75-91, 1971

    一般社団法人 日本甲殻類学会

被引用文献 (3)*注記

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