歯科用銀合金の局部腐食の電気化学的計測

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タイトル別名
  • Electrochemical Measurements of Localizied Corrosion of Dental Ag-based Alloys

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抄録

従来の歯科用合金の腐食は全面が均一に腐食するいわゆる全面腐食によって評価されてきた.しかし, 臨床上では修復物の歯頸部や隣接面あるいは窩壁と修復物の間などに局所的な腐食が認められる.そこで本実験では局部腐食の代表例としてすきま腐食と接触腐食を取り上げ, その腐食挙動を検討した.<br> 試料電極として市販のAu-Pd-Ag-Cu合金とAg-Sn-Zn合金を用いた.全面腐食モデルとしては通常のモデルを用い, すきま腐食モデルとしては試料露出面に50μmのすきまをガラス板を用いて作成したものを, 接触腐食モデルとしては先の2種類の合金を導線にて短絡したものを用いた.pH2, 0.9%NaCl溶液に60日間試料を浸漬し, 2日毎にクーロスタット法による腐食電位(E)と分極抵抗値(Rp)を測定した.さらに, 全面腐食に対するすきまによる腐食反応の影響を調べるため電位走査法にてイオン反応量を検討した.接触モデルでは両合金に流れるガルバニック電流量を測定した.また, 60日目の試料については表面をESCAによって元素分析した.<br> その結果, すきま腐食ではAu-Pd-Ag-Cu合金の場合, 全面腐食に対しE, Rp共に低下し, すきま内イオン反応量の低下も認められた.Ag-Sn-Zn合金の場合では, 全面腐食に対しEは大きく低下したが, Rpはほぼ同じ値を示し, すきま内におけるイオン反応量の低下は認められなかった.一方, 接触腐食ではAu-Pd-Ag-Cu合金の場合, 全面腐食と比較してE, Rp共に低下した.また, 表面分析からは含有成分に認められないSnが多量に検出された.Ag-Sn-Zn合金では, E, Rpともに全面腐食と同様な変化を示した.表面分析からSnに富んだ試料表面被膜であることが認められた.ガルバニック電流は60日目にもわずかながら通電を認め, 接触腐食が長期間継続していることが示された.以上の結果から, 周囲の腐食環境が変わると貴な金属の場合, 腐食速度が変化することが示唆された.

収録刊行物

  • 歯科材料・器械

    歯科材料・器械 12 (4), 473-485, 1993

    一般社団法人 日本歯科理工学会

被引用文献 (1)*注記

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