カエルの味覚器の構造とその組織化学に関する光顕的ならびに電顕的観察

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  • The Ultrastructural and Cytochemical Studies on the Taste Organs of the Frog
  • カエル ノ ミカクキ ノ コウゾウ ト ソノ ソシキ カガク ニ カンスル コ

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抄録

ウシガエル(Rana catesbiana)の舌および口蓋にみられる味覚器の微細構造ならびに組織化学的性状を検索した.(1) 味覚器は, 粘液細胞と味細胞およびMerkel細胞より構成されていた.(2) 粘液細胞の核上部細胞質は, アルシアン青, PA-TCH陽性の分泌果粒で満たされていた.この細胞は, 味覚器周囲の線毛細胞と協同して, 味物質の味細胞表面への到達ならびに吸着を容易にし, さらに味覚器表面の浄化に役立っているものと考えられた.(3) 味細胞は, その先端の形態により微絨毛型と杆状突起型に区別された.両型とも基底部細胞質内には, 直径90-140nmの大型有芯小胞がみられた.これらの小胞は, 神経線維との接触部位に特に集合し, その様なところでは, しばしば求心性シナプスが観察された.(4) Merkel細胞は, 1個の味覚器内に4-6個みられた.核は, 味覚器の基底外側部に位置し, そこから細胞質は基底膜に沿って内側へと細長く伸びていた.細胞質はPAS陽性で, PA-TCH反応により多数のグリコーゲン果粒が認められた.さらに細胞質内には, 直径80nm前後の特殊果粒が多数みられた.Merkel細胞の存在により, カエルの味覚器はchemoreceptorとしてばかりでなく, mechanoreceptorとしても機能している事が強く示唆された.(5) Na^+とK^+で活性化したATPaseを光顕的ならびに電顕的に検出した.ATPaseは, 味覚器の細胞の膜に限局して存在するが, 味覚器表面および基底膜と接する細胞膜, あるいは神経線維との接触部位ならびにシナプス間隙には, 活性はほとんど認められなかった.(6) ALPase活性は, 舌および口蓋の味覚器ともに認められなかった.稿を終るにあたり, 御指導, 御校閲下さった嶋村昭辰教授に深く感謝致します.本研究の一部は昭和54年度文部省科学研究補助金, 奨励研究(A)477022によって行なわれた.

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