ラット歯髄-開口反射と舌-舌下神経反射に及ぼす笑気吸入効果の差異

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  • The Effects of 30% Nitrous Oxide Inhalation on Two Oral Reflexes in the Rat

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抄録

ラットに於いても歯髄への閾値以上の電気刺激は侵害受容器を興奮させ, 三叉神経を上行し脊髄尾側亜核を経て開口筋を反射的に収縮させる歯髄-開口反射が存在する.一方, 舌に刺激を加えた場合に舌下神経に反射的に起こる舌-舌下神経反射の存在も知られている.この舌-舌下神経反射には触刺激や味刺激によって誘発されるものと痛み刺激によって誘発されるものとがある.舌神経に閾値より若干大きめの最大下刺激を加えた場合は痛みの神経を興奮させるとともに, 触覚情報を伝える神経をも興奮させることが知られている.弱い最大下刺激を加えた場合の舌-舌下神経反射は触覚情報が処理される経路を通り, 歯髄-開口反射ではすべての求心性情報は痛み情報が処理される経路を通るものと考えられる.30%笑気ガスは歯科では鎮静・鎮痛目的のために広く使用されているが, このガスが痛み情報の経路に作用し何らかの効果を与えているかどうかを定量的に把握することは重要である.そこで本研究はラット切歯の歯髄に電気刺激を加えて生じた侵害情報に基づく開口反射と舌神経に弱い最大下刺激を加えて生じた主に触覚情報や味覚情報に基づく舌下神経反射に対する30%笑気吸入の影響をそれぞれ顎二腹筋と舌筋の誘発筋電図の潜時や振幅によって検討した.潜時は歯髄-開口反射では5.11±0.14 msec, 舌-舌下神経反射では5.21±0.24 msecで, 30%笑気吸入でもそれぞれほとんど変化はなかった.反射放電の振幅値は歯髄-開口反射では30%笑気吸入によってコントロール値に対し約40%と有意に減少したが, 舌-舌下神経反射では有意な差はなかった.このことから歯髄からの痛み伝導路に対して笑気ガスが伝導抑制に関与していることが分かった.

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