丹沢トーナル岩複合岩体中の角閃石の離溶組織

  • 冨田,克敏
    Department of Geology and Mineralogy, Faculty of Science, Kyoto University
  • 山口,佳昭
    Department of Geology and Mineralogy, Faculty of Science, Kyoto University
  • 滝田,良基
    Department of Geology and Mineralogy, Faculty of Science, Kyoto University

書誌事項

タイトル別名
  • 10. EXSOLUTION TEXTURE IN COEXISTING AMPHIBOLES FROM TANZAWA TONALITE COMPLEX, TANZAWA MOUNTAINLAND, CENTRAL JAPAN

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抄録

変成岩中で共存する緑色角閃石とカミングトン閃石中に離溶組織が存在することについては,すでに多くの報告がある。しかし火成岩中で共存する緑色角閃石とカミングトン閃石中に離溶組織が存在するという報告は1例だけである。丹沢トーナル岩複合岩体中に共存する緑色角閃石とカミングトン閃石には普遍的にラメラ組織が見い出される。このラメラは約1μの巾で,母相の(100)面と(101)面(結晶軸を体心格子としてとれば,(001)面)にほぼ平行に存在する。この複合岩体の主体をなす畦ケ丸型トーナル岩と,早期に貫入した大滝沢型閃緑岩中に共存する緑色角閃石とカミングトン閃石8ヶについて,プレセッション法によるX線単結晶回折及びX線マイクロアナライザーによる化学分析を行なった。その結果,緑色角閃石にはカミングトン閃石が,(100)面及び(101)面に平行な離溶相として存在し,カミングトン閃石には,緑色角閃石が(100)面及び(101)面に平行な離溶相として存在する。離溶相の組成を,単位胞の体積から推定すれば,緑色角閃石中の離溶相のカミングトン閃石は,共存するカミングトン閃石の母体の組成とほぼ一致する。またカミングトン閃石中の離溶相の緑色角閃石は,共存する緑色角閃石の母体の組成とほぼ同じである。また緑色角閃石とカミングトン閃石の組成を検討すると,共存する両角閃石のFe/Mg比はほぼ一定である。以上のことから,共存する両角閃石は比較的高温条件で初生鉱物として生成し,その後のゆっくりした冷却過程で,緑色角閃石は,カミングトン閃石を,カミングトン閃石は,緑色角閃石をそれぞれ離溶したと推定される。

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被引用文献 (1)*注記

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