腎細胞癌における手術療法の検討

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タイトル別名
  • CLINICAL STUDY OF OPERATIVE THERAPY FOR RENAL CELL CARCINOMA
  • 1. About Nephrectomy
  • 第1報 腎摘除術について

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抄録

1961年9月から1989年8月までに群馬大学泌尿器科で入院治療した腎細胞癌170例のうち原発巣摘除術が行われた148例に対して予後を中心に治療側因子の面から検討した.<br>手術術式は根治的腎摘除術100例, 単純腎摘除術46例, 腎部分摘除術1例および腎腫瘍核出術1例であり, リンパ節郭清は根治的腎摘除術が行われた100例中の53例に施行された.<br>手術に関して予後を観察する因子かどうかを性別, PS, stage, 腎摘除術式, リンパ節郭清の有無および腎摘出重量に分けて生存率の有意差検定を行い, また再発率についても検討を行った.<br>性別は男女間では特に有意差は認めなかった. PSでは, PSが0と1以上の2群間での比較で前者が有意に高い生存率であった.<br>stage 別では stage IIIAとIIIB+Cで有意差を認めたが, stage I, II, IIIでは各々有意差を認めず, stage IIIAまでを low stage と考えた.<br>術式では単純腎摘除術と根治的腎摘除術を行った stage I~IIまでの low stage 症例で, 後者が有意に生存率は高かったが, リンパ節郭清の有用性について stage I~IIの症例で検討したところ特に有意差は認めなかった.<br>腎摘出重量は500g前後で比較したところ500g未満の症例で生存率は有意に高かったが, stage I~IIIAまでの検討では特に有意差を認めなかった.<br>再発に関して, 手術術式による各 stage 別検討で, 根治的腎摘除術が単純腎摘除術に比べ stage I, IIともに再発率は低く, かつ stage Iが stage IIに比べ再発率は低かった. また, 根治的腎摘除術を行った stage IIと stage IIIAの再発率はほぼ同程度の頻度 (30%) であった.<br>到達経路に関して stage III以上の症例で単純腎摘除術を施行した全例が経腰式・経腹膜外経路で行われ非治癒切除例であったのに対して根治的腎摘除術を行った症例は経腹式または経胸腹式経路であり, 後腹膜リンパ節郭清術, 下大静脈腫瘍血栓除去術あるいは隣接臓器の合併切除など拡大手術が可能であった.<br>特に stage IIIAの症例において stage I, IIの各症例との生存率に関する比較では有意差がなく, 再発率も stage IIと同様の頻度であり腫瘍塞栓除去術を完壁に行うことが重要であると考えた.<br>以上の結果から, 腎細胞癌の手術の際に良好な予後を期待できる条件はPSが0であること, stage 別で stage I~IIIAまでは根治的腎摘除術を行うこと, stage IIIB 以上でも治癒切除が可能である限り, 経腹式あるいは経胸腹式経路で根治的腎摘除術を含む腫瘍の合併切除を積極的に行うことが予後の改善につながるものと確信した.

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