精巣上体 Papillary cystadenoma の1例

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  • A CASE OF PAPILLARY CYSTADENOMA OF THE EPIDIDYMIS

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抄録

症例は48歳男性. 1992年に右陰嚢内の小腫瘤を自覚したが, 軽度の圧痛以外の症状がないため, 経過を観察していた. 徐々に腫大し, 1996年8月自発痛を生じ, 鶏卵大に腫脹した. 超音波検査で, 精巣上体に多くの隔室からなる約4cm大の腫瘤と陰嚢水腫を認めた. 穿刺で血性内容液を認め, 細胞診は陰性であった. 精巣腫瘍マーカー陰性より慢性精巣上体炎と診断し, 右精巣上体摘除術を施行した. 割面は多房性嚢胞と血腫を認めた. 組織像は, 小型類円形核に明るい豊かな胞体を示す異型性のない腫瘍細胞が多房性嚢胞の内面を覆い, 乳頭状増殖を認めたことより papillary cystadenoma と診断した.<br>我々が検索した限りでは papillary cystadenoma は世界で約50例報告され, 我々の症例は本邦で17例目であった.<br>papillary cystadenoma 症例の38%は von Hippel-Lindau (以下, VHL) 病に合併し, 腎細胞癌は精巣上体にも転移するので, VHL病患者の精巣上体腫瘍については, papillary cystadenoma と腎細胞癌転移との鑑別が重要となる. papillary cystadenoma は組織像が高分化の腎細胞癌に類似し, 転移性腎細胞癌や発生部位の隣接した精巣網多嚢胞乳頭状腺癌との鑑別が極めて困難な場合があり, 病理診断以外の側面からの除外診断の必要性が喚起されている. 本症例は腎細胞癌の合併やVHL病との関連はなく, 術後8ヵ月経過した現在, 再発を認めていない.

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