日本産キヌシッポゴケモドキ属(コシッポゴケ科;蘚類)の新種, ボンチゴケ(新称)Brachydontium polycarpum Brachydontium polycarpum (Seligeriaceae, Musci), a New Species from Japan

Abstract

富山県立山連峰の室堂にある雷鳥沢から, キヌシッポゴケモドキ属の新種, ボンチゴケBrachydontium polycarpumを報告した。室堂周辺は, ハイマツ以外には主だった植被のない, 標高2300m周辺に広がるやや平坦な場所である。冬から春にかけての長期間にわたり深い雪に覆われているが, 雪渓がとげる夏には強い日差しに曝される。ここに報告した新種ボンチゴケは, 室堂乗越からの沢と雷鳥沢本流とが出会う河原にある, ひと抱え以上もある岩上に生育している。ボンチゴケはこの岩の表面に固着するようにして生育しているが, つよい日差しに曝される表側ではなく, 岩の側面, あるいは陰になった部分に限られるようである。形態上の特徴は, キヌシッボゴケモドキ属としては植物体が大きくてよく分枝すること, 2-3個, 時にはそれ以上の数の胞子体を一本の茎に側生すること, 〓は球形に近く, 乾くと〓壁にはっきりとしたしわができること, 〓柄がへび状に曲がること(湿った状態で顕著である), そして〓歯を欠くことである。ボンチゴケは北米から知られているBrachydontium olycarpumに形態が非常に似ている。B. olycarpumは茎葉の長さが通常2mm以下であり, 乾燥状態では葉の中央よりも先がまっすぐ, 濡れた状態では斜め上方にまっすぐに開出する。一方のボンチゴケでは, 茎葉は乾燥時にはっきりと巻縮し, 湿ると広く開田する。またB. olycarpumの葉は, はっきりとした披針形で, 鞘部の発達が弱く, ボンチゴケのように鞘部でしっかりと茎を抱くことはあまりない。標本から判断する限り, 両種の生育状態も異なっている。B. olycarpumは, 岩上の土に茎が半ば埋まって状態で生育しているが, ボンチゴケは図1に見られるように岩表面の浅い溝や表面に直接生育しており, 茎の下部が土に埋まっていることは全くない。Brachydontium olycarpumは, 実はこれまでにスガダイラゴケという和名で, 北海道, 長野県などの数カ所から報告されている。日本で見つかっているスガダイラゴケと北米のB. olycarpumとは〓柄の長さが著しく異なっている。しかしながらこれら両者は, これまで同種として扱われてきている。今回日本から, B. olycarpumに近縁で, しかも長い〓柄を持つ植物が見つかったことは, スガダイラゴケの種としての位置づけについて再検討を迫るものであり, 非常に興味深い。これまでに日本から報告されたキヌシッポゴケモドキ属植物は, 以下のように区別することができる。1植物体は, なかば基物の土に埋まって生育する。〓柄は非常に短く, 〓は包葉間に沈生する………………………………………………………………………………スガダイラゴケ1基物である岩石表面に生育する。〓は包葉から超出する…………………………………22胞子体は側生し, 一本の茎に複数個がつく。〓柄は濡れると強くねじれる。〓歯を欠く。立山室堂に特産………………………………………………………………………ボンチゴケ2一本の茎には胞子体は一つで, ほぼ頂生する。〓柄はまっすぐ。〓歯は非常に短いが存在する。中部日本各地に普通に産する………………………………キヌシッポゴケモドキ

A new species, Brachydontium polycarpum H. Akiyama, is reported on the basis of specimens collected at the alpine rocky place Murodo, Mts. Tateyama, Central Japan. Brachydontium polycarpum is most closely related to B. olympicum (Britt.) McInt. & Spence reported from North America, in larger plant size, cygneous setae, and spherical to subspherical, eperistomate capsules. It differs from B. olympicum in the longer and more crispate stem leaves with more or less sheathing bases.

Journal

Acta phytotaxonomica et geobotanica   [List of Volumes]

Acta phytotaxonomica et geobotanica 48(1), 61-67, 1997-08-30  [Table of Contents]

The Japanese Society for Plant Systematics

References:  8

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Codes

  • NII Article ID (NAID) :
    110003758793
  • NII NACSIS-CAT ID (NCID) :
    AN00118019
  • Text Lang :
    ENG
  • Article Type :
    ART
  • ISSN :
    00016799
  • NDL Article ID :
    4324699
  • NDL Source Classification :
    ZR3(科学技術--生物学--植物)
  • NDL Call No. :
    Z18-64
  • Databases :
    CJP  NDL  NII-ELS