ヤマホトトギスの花部生態学的研究 Floral Biology of Tricyrtis macropoda Miq. (Liliaceae)

Abstract

ヤマホトトギスの花部生態学的研究を行い, 近縁なヤマジノホトトギスと比較した。両種は受粉様式の特徴の多くが似ている。花は2日間咲いており, 雄性先熟で, 自家和合性がある。主要なポリネーターはトラマルハナバチである。しかし, ヤマジノホトトギスは花被が基部から1/3のところで平開するのに対して, ヤマホトトギスは下方へ折れ曲がる。トラマルハナバチは折れ下がった花被片に止まってから折れた部分の稜によじ登るか, あるいは直接稜部に止まって, 吸蜜する。隣の蜜腺を探るためには, その狭い稜部を歩かなければならない。ホトトギス属の直立型の花を持つほとんどの種には, 花被の基部近くの内面に黄橙色の蜜標がある。また, ヤマジノホトトギスは同じ場所に大きな紫色の斑点があり, それも蜜標と考えられる。しかし, ヤマホトトギスのその場所には可視斑点は認められず, 特別に紫外線を吸収するか反射する部分もない。花被の稜に紫斑点が集中し, また折れ下がった花被部の紫斑が少ない花では, その斑点は均一に分布せずに稜近くに集まる傾向があるが, そこは他の種の蜜標がある位置より上である。大部分のホトトギス属植物がほととんど同じ蜜標を持っていることなどから, ヤマホトトギスはそれを退化させたと考えるのが自然であろう。いくつかの植物種で, 蜜標を持たない植物は持つものより適応度が下がることが知られている。ヤマホトトギスは蜜標を退化させても, 適応度を低下させないと考えられる。トラマルハナバチはヤマホトトギスの折れ下がった花被に止まると, 頭が必然的に花の基部近くに来るし, 稜部にいても, そこが狭くて窮屈なため, 頭は基部近辺から遠く離れることはない。従って, 蜜の匂いを感じて, 蜜標がなくても正確に蜜腺を探るのかも知れない。ヤマホトトギスに蜜標がないのは, その特殊な花被の形態と関連があると思われる。稜上とその近辺に集まっている斑点は, ポリネーターの着地目標になっている可能性がある。

The floral biology of Tricyrtis macropoda was investigated and compared with that of a closely related species T. affinis. Many features of the pollination system are similar in the two species : for instance, flowers are protandrous and self-compatible ; they last for two days ; and the main pollinator is Bombus diversus diversus. The perianth of Tricyrtis macropoda, however, is turned down at a point 1 / 3 of the way up from the base in contrast to that of T. affinis, whose perianth is horizontally patent at the same level. In Tricyrtis macropoda the bumblebee alights on the steep perianth and then climbs up to its ridge to suck nectar ; this behavior is rather different from its placid behavior in the flower of T. affinis. The flower of Tricyrtis macropoda has no apparent nectar guides in the basal part of the perianth. A reason for and an evolutionary trend leading to the lack of the nectar guide is discussed.

Journal

Acta phytotaxonomica et geobotanica   [List of Volumes]

Acta phytotaxonomica et geobotanica 45(1), 33-40, 1994-09-30  [Table of Contents]

The Japanese Society for Plant Systematics

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Codes

  • NII Article ID (NAID) :
    110003760920
  • NII NACSIS-CAT ID (NCID) :
    AN00118019
  • Text Lang :
    ENG
  • ISSN :
    00016799
  • NDL Article ID :
    3908289
  • NDL Source Classification :
    RA47(生態--植物)
  • NDL Source Classification :
    ZR3(科学技術--生物学--植物)
  • NDL Call No. :
    Z18-64
  • Databases :
    NDL  NII-ELS 

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