マムシグサ群の多様性

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タイトル別名
  • Diversity in the Arisaema serratum group
  • マムシグサグン ノ タヨウセイ

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抄録

マムシグサ群は長い偽茎と, 葉軸の発達する鳥足状小葉により特徴づけられるテンナンショウ属マムシグサ節sect.Pedatisectaの一群である。形態的に多型であり, 多くの分類群が記載されてきたが, 遺伝的には分化がきわめて小さいことが明らかになっている。また, 群内で認められた形態群間に低頻度ではあるが中間型がある, 自然雑種がある, F_1雑種の花粉稔性が低下しない, など雑種形成を通じて遺伝的な交流があることを示唆する状況証拠もある。しかし一方では, 多くの場所で, 異なる形態群が形態上の差異を保ちつつ同所的に分布しているのも事実である。本稿では, 低頻度の中間型を除いた場合, マムシグサ群内にどのような形態群が認められ, どのような分布を示すかについて現在までの知見をまとめることを試みた。また, 認めた形態群に関して発表されている学名との対応を試みた。マムシグサ群を, 花期が遅く, 仏炎苞が葉よりも遅く展開し, 舷部内面に細かい縦皺がある第1亜群(カントウマムシグサ亜群), 花期が早く, 仏炎苞が葉よりも早く展開し, 舷部内面が平滑な第2亜群(マムシグサ亜群), 花期や仏炎苞展開のタイミングがそれらの中間的で, 舷部内面や辺縁にしばしば微細な突起を生ずる第3亜群(ホソバテンナンショウ亜群)に大別する。第1群にはカントウマムシグサ(トウゴクマムシグサ), ミクニテンナンショウ, コウライテンナンショウ, ハチジョウテンナンショウ, オオマムシグサ(イズテンナンショウ, ヤマグチテンナンショウ), ヤマトテンナンショウ, ヤマザトマムシグサ, ヤマジノテンナンショウ, スズカマムシグサ, 第2群には, マムシグサ(ヤクシマテンナンショウ), ヒトヨシテンナンショウ, タケシママムシグサ, 第3群にはホソバテンナンショウ, ミャママムシグサ, ウメガシマテンナンショウ, "中国地方型のホソバテンナンショウ", などが認められる。しかし, 現地調査はまだ不十分なものであり, フェノロジーやポリネーターに関することも含め, より詳細な検討が必要である。

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参考文献 (32)*注記

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