大型ビルの増加と道路面積が札幌のクマネズミの盛衰に関与した可能性

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タイトル別名
  • Probable relation of increase in big buildings and road coverage to the rise and decline of Rattus rattus in Sapporo, Japan
  • Probable relation of increase in big bu

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抄録

わが国のビル街では, 1970年代からクマネズミの横行が目立つようになったが, 札幌では1980年代に至ってその駆除に成功した。その原因を, 空中写真の解析によって考察した。解析対象は札幌, 仙台, 新宿, 横浜, 名古屋の商業・業務地域である。高さ10m以上のビルの占有面積割合を算定すると, いずれの都市でも1960年代半ばに5-10%であったものが, 1970年代には15%以上に急増した。1988-1990年における1ha当たりの平均道路面積は, 札幌で0.424±0.133haで, これは他のいずれの都市の値よりも有意に大きかった。また, その変動係数は31.4%で, 他のいずれの都市よりも小さかった。これは, 札幌では平均的に道路面積が広いのに対し, 他の都市では道路面積が狭い上に, 広い道路と狭い道路とが混在していることを示す。クマネズミの生息に適した大型ビルの急増がクマネズミの横行を促したが, 道路面積の分布形態はその後のクマネズミ駆除の成否を分ける一因になった可能性もある。広い道路で街区を区切られた札幌では, すみ場の分断化によって容易に駆除されたが, 狭い道路の混在する他の都市では分断化がなされず, 駆除の困難な状態が続いてきたものと推測される。

収録刊行物

  • 衛生動物

    衛生動物 48 (3), 251-255, 1997

    日本衛生動物学会

被引用文献 (8)*注記

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参考文献 (18)*注記

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