身体障害者向け特目住宅の住空間構成に関する研究 : (その 1) 住戸水準及び住戸の平面構成の傾向

書誌事項

タイトル別名
  • STUDY ON THE PUBLIC HOUSING PLANNING FOR THE HANDICAPPED (No.1) : On the Housing Level and the Tendency of the Dwelling Unit Plans
  • 身体障害者向け特目住宅の住空間構成に関する研究-1-住戸水準及び住戸の平面構成の傾向
  • シンタイ ショウガイ シャムケケ トクモク ジュウタク ノ ジュウクウカン コ

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抄録

1)身障者世帯向特目住宅の特殊設計を実施する県・市は急増し, 今後はより入口規模の小さい市に波及し増えていくすう勢にある。しかし特殊設計による住戸及びその室の空間構成は初期の段階のものであり, 模索期に当る。2)身障者用として特殊設計された既存の殆どが車いす用であり, 特殊設計を要するのは車いす用であるという認識である。又第二種のみの建設にとどまっている自治体が多く, [2DK]が開発の中心という現状である。身障者の多様なハンディキャップ, (在身障者世帯に適する住宅は殆どなく)幅広い需要層の存在に対し, 今後は入居対象を拡大する施策の必要性と意義について検討を加える必要がある。3)住戸の全体的な水準を示す指標としての住戸規模は低水準にあり, いずれの住戸タイプも特目促進会議提案の最低水準以下で, 且つ一般世帯用の本城提案最低水準を下回るものもある(3DKに多い)。[DK型]と[LDK型]とでは前者が, [DK型]の[2DK]と[3DK]とでは後者が低水準にある。[2DK]と[3DK]の規模が同一範囲に重複分布したり, DKとLDKとの規模が近似したり, その区別があいまいである。今後は住戸規模水準の向上を計ることは勿論, 各住戸型に対する計画条件を明確にし, その条件を尊守する住戸計画が遂行されるべきである。4)これまでの知見による車いす用の平面構成に配慮されるべき条件は, 全体的には充足される方向にある。しかし, 十分な検証を経た平面構成の基本条件としては未確立であるため, その充足状況は個別的で形式的な配慮に終止している場合が多い。多様な平面構成から特徴的な事項をあげる。(1)DKは隣接居(主)室と連続一体化が計られているが, LDKは独立化の傾向が強い。(2)2居室間相互も連続化が計られる傾向にある。(3)(L)DKから分離したプライバシーある居室を1室とる傾向にあるが顕著ではない。(4)身障者就寝室用としての洋室確保率は高く80%に達する。(5)各室への車いすアプローチは一応可能であるが, 和室に対しては出入口幅の狭小例が目立ち, 問題の洋室通り抜けが30%弱ある。(6)車いすによる2方向避難の充足度は75%で高いが, 不徹底である。5)全体的な平面構成の特徴としては, 一般世帯用の踏襲が濃厚で, 車いす用特有のものは数少ない。住戸型別の平面構成の傾向は, まず[DK型]の場合[DK^S型]と[DK^N型]とに分かれ, 後者の例が多い。[DK^N型]の場合[DK^N・洋^S]が殆どで, [DK^S型]は[DK^S・和^S]と[DK^S・洋^S]とに分れ, 前者の比率が高い。[LDK型]の場合はすべて[LDK^S型]であり[LDK独立型]が主になる。各住戸型の平面構成タイプを抽出典型化すると次の如くである。-2DK-DK^S連続型[DK^S・和^S・居^N(又-居^N)][DK^S・洋^S・居^N(又-居^N)]DK^N連続型[DK^N・洋^S・居^N]DK^N独立型[DK^N-洋^S・居^S]-3DK-多種で顕著な傾向なし-2LDK-LDK^S独立型[LDK^S-和^N-洋^N]車いす用特有のものとして, [2DK・DK^S連続型]の[DK^S・洋^S・居^N(又-居^N)]を指摘できるが, 例数, 建設戸数はむしろ僅少で代表とはいえない。6)以上の空間構成に関係する要因に, 車いす用の住棟形式とその位置及びアプローチがある。最も多い中層の段階室型では南平入りが主で, 残りが北平入りと北脇入りとに2分され, 高層に多いバルコニーアクセス型ではすべて北平入りである。平入りは(L)DKに直接取り付き, 脇入りは廊下を経て(L)DKに至るのが殆どである。つまり中層1階にある場合は, [DK^S型]・[LDK^S型]に集中し, [2DK^S]・[2LDK^S]が, 高層1階にある場合, [2DK^N]が代表住戸である。大きな欠点である[2DK^N]の南洋室の通り抜けは, この住棟とアプローチに起因し, 北廊下平入り玄関がDK^Nにとり付きDK^Nと南洋室が連続化され, 狭小間口の下で南洋室を通り抜け南和室へアプローチする結果である。全体で最も例数の多い[2DK^N]の改善課題の一つはこれである。階段室型の難点は, 一般住棟形式のままでは車いすの北脇入りが不可能な点で, そのために南平入りとし2方向避難の確保されていない例が増える。この対応策は1階から2階への階段を北棟外へ張り出す手法である。車いす用住戸のまとめられ方は, 中高層の1階全部が2/3を占め, 他は1階の一部である。住戸面積の割り増し例は約20%で2m^2〜10m^2の範囲で, 中高層1階での上層枠外への張り出しが最も多く, そのうまい解決手法は少ない。今後も中高層1階で面積増が計られる方向にあり, その手法探究が残されている。より将来的には, 交通不便な団地にでなく, 市街地の狭小敷地で少戸数の低層でプランニングに自由度を見出せる開発も望まれ, その方がより需要も高まると考えられる。

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