弓部大動脈手術における選択的脳灌流法の検討 : 主として高次脳機能に及ぼす影響について

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  • Neuropsychologic Outcome after Aortic Arch Surgery : Effects of a Selective Cerebral Perfusion Technique under Deep Hypothermic Circulatory Arrest

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抄録

選択的脳灌流法を用いて弓部大動脈置換術を行った13例(SCP群)について,体外循環下の心臓手術15例(CPB群)と腎動脈下腹部大動脈置換術を行った10例(Y群)を対照として術後早期の高次脳機能を比較検討した.検査にはベントン視覚記銘検査と三宅式記銘力検査を用い,四つのサブスコアで評価した.年齢,術前脳血管障害の頻度および術前検査成績には3群間で有意差を認めなかった.術後には3群とも四つ中三つのサブスコアで成績の低下を認めたが3群間に有意差は認められず,低下の程度にも有意差はなかった.低下した三つのサブスコアの一つではSCP群の術後成績が術前に比し有意に低下し,Y群間と有意差を認めたが,CPB群間と有意差はなかった.SCP群の低下例と非低下例の比較では前者で選択的脳潅流時間が有意に長かった.以上の結果より体外循環や選択的脳灌流を行うことが術後の高次脳機能低下の要因の一つであることには間違いはないが,いずれの手術においても術後早期にはある程度の低下がみられ,その重症度についてはわれわれの選択的脳潅流法あるいは体外循環法によれば,低下の程度は決して著しいものではなかった.手術に際しての全身麻酔や薬剤の使用,手術操作に伴う生体への侵襲と患者の精神的,体力的な消耗や疲労など,手術を受けたということ自体あるいはそれに付随した種々の要因が術後の高次脳機能の低下に大きな影響をもっていると考えられる.

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