急性炎症における一酸化窒素と酸化的ストレス障害

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抄録

【はじめに】我々は先行研究において急性炎症時に産生される一酸化窒素(NO)を阻害すると、炎症病巣への滲出細胞数や滲出液量が有意に増加することを示し、この反応には活性酸素(O2-)が関与している可能性が示唆された。しかしNOとO2-がいかに炎症反応を修飾しているかについては未だ不明な点が多い。そこで今回我々は急性炎症におけるNOの作用を、NOとO2-が反応して生成されるペルオキシニトライト(ONOO-)との関連から検討した。【対象と方法】実験動物はWistar系雄性ラット(150±20g,n=35)を使用した。胸膜炎の惹起には、1%カラゲニン(Cg;0.15ml)を右胸腔内にエーテル麻酔下に投与した(対照群)。またCg投与直前にNOS阻害剤(1)AE-ITU(選択的iNOS阻害剤;1,10mg/kg)(2)L-NNA(非選択的NOS阻害剤;0.1,1mg/kg)を同胸腔内に投与した。Cg投与から6h経過後エーテル麻酔下にラットを致死させ、胸腔内の滲出液量、滲出液中の細胞数をカウントした。その後、滲出液中のNO濃度、ONOO-濃度を測定した。【結果】対照群の滲出液量と細胞数は1.16±0.09mlと48.5±2×106個であった。一方、AE-ITU投与群は滲出液量1.73±0.13ml、細胞数99.8±13×106個と対照群に比べて両者とも有意に増加(p<0.01)し、またL-NNA投与群においても同様に滲出液量1.62±0.08ml、細胞数92.8±6×106個と有意に増加(p<0.01)した。NO濃度は対照群14.5±1.0μMであったが、AE-ITU及びL-NNA投与群ではそれぞれ5.3±1.0μM、7.3±1.0μMと有意に減少(p<0.01)した。ONOO-は対照群49.1±2.9 nM/min/106cellsに対し、AE-ITU及びL-NNA投与群ではそれぞれ82.7±7.3 nM/min/106cells、74.7±4.2 nM/min/106cellsと有意に増加(p<0.01)した。【考察】Cg胸膜炎ラットにおけるNOSの阻害は、ONOO-産生を増大させるとともに炎症の増悪を引き起こした。FreemanらはNOがO2-産生を下回る場合、NOによる細胞保護作用は発現されず、むしろONOO-の産生を介した細胞傷害をもたらすことを報告した。この仮説が正しいとすれば、今回の結果においてもNOとO2-との相互作用により生じたONOO-が、炎症細胞の組織内浸潤を促進させることにより炎症を増悪させたと推測される。

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