膜型マトリックスメタロプロテアーゼの活性制御と細胞運動

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抄録

膜型マトリックスメタロプロテアーゼ(MT-MMP)は、発現細胞の表面に局在して細胞周辺部の細胞外基質(ECM)を分解することにより、細胞の増殖、運動、分化、形態変化などの制御因子として機能すると考えられる。6種類知られているMT-MMPの中で、特に研究の進んでいるMT1-MMPは悪性のがん細胞で高発現しており、浸潤・転移に重要であると同時に、血管内皮細胞にも発現して血管新生にも必要とされる。MT1-MMPが細胞の浸潤に用いられる際には、運動と連動した制御を受け、浸潤の先進部で効率よくECMを分解して浸潤ルートを確保する必要がある。細胞運動に際して、MT1-MMPは運動先進部に局在し、そこでホモオリゴマーを形成することを見出した。オリゴマーを形成することによってMT1-MMPは効率よくproMMP-2を活性化することが可能となり、運動先進部においてMT1-MMPを中心としてECM分解酵素がアセンブルし、活性化する仕組みの一端が明らかとなった。また、浸潤にはECM分解だけでなく細胞運動の亢進が必要である。MT1-MMPはCD44を介した細胞運動を、CD44に切断に関与することによって促進することも明らかになった。このように運動先進部で機能を果たしたMT1-MMPはTIMP-2による抑制を受けたり、自己分解によって活性を失う一方で、internalizationにより細胞内に取り込まれることが判った。この細胞内への取り込みは細胞表面の古い分子を絶えず新規の分子に置き換えるために必要らしく、細胞内への取り込みが行えない変異体は運動先進部へ蓄積し、野生体との共発現では細胞運動、ひいては浸潤の抑制が起こすことが明らかとなった。細胞運動と連動したMT1-MMPの活性制御についての一連の流れについて最新の知見を報告する。

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