ヒトIV型コラーゲンを認識するモノクローナル抗体JK199のエピトープの性状の検討

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抄録

ヒト胎児肺由来線維芽細胞TIG-1を培養して得られる細胞層中に、生体内では不溶性の会合体を形成して基底膜に局在しているIV型コラーゲンが蓄積されていることをモノクローナル抗体JK199を用いて報告した(Takeda,Y.et al.(1993)CONNECTIVE TISSUE,25,183-188)。JK199は、ヒト胎盤ペプシン可溶化IV型コラーゲンを抗原として得られたものであり、様々な基底膜を免疫染色した。ヒト胎盤抽出物に対してJK199固定化カラムを用いたところ、吸着画分にヒトα1(IV)鎖の配列と一致する配列をもった2種のペプチドが存在した。これらのことから、基底膜の主要構成成分であるヒトIV型コラーゲン会合体を認識すると考えられていたが、ヒトα1(IV)鎖とJK199のエピトープの関係は明らかになっていない。本研究ではJK199のエピトープの情報を得る一方で、JK199抗原であったIV型コラーゲンの単離とその性状の検討を行った。単離したJK199抗原は、インタクトサイズのヒト〔α1(IV)〕_2α2(IV)単分子であった。また、JK199抗原を還元熱変性した後にはJK199を用いたELISA法では認識できなくなった。もう一つのモノクローナル抗体JK132は、変性し、コラーゲンらせん構造を失ったα1(IV)鎖を認識することが分かっている。JK132は、ELISA法では変性処理をしないJK199抗原とは反応せず、還元熱変性後に反応性が見られた。これらのことからJK199はヒトα(IV)鎖の一次構造を認識するのではなく、コラーゲンらせんを巻いた分子状態、可溶性のヒトIV型コラーゲン単分子を抗原として認識するものと考えられた。細胞培養上清にJK199固定化カラムを用いることによって、基底膜構築の作用機序の研究の試料として利用可能な、インタクトサイズでコラーゲンらせんを巻いたヒトIV型コラーゲン単分子の単離が可能となった。ヒトIV型コラーゲン単分子・会合体に対するJK199の反応性を比較することで、基底膜に存在するヒトIV型コラーゲン会合体構造の解析も可能となった。

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