矯正学的歯の移動による荷重痛覚閾値と歯髄および辺縁歯周組織の電気的痛覚閾値の変動について

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  • The changes of threshold for loading force and electric pain perception thresholds in the dental pulp and the periodontal tissue in response to orthodontic tooth movement

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抄録

矯正治療中の患者は, しばしば痛みに悩まされる.本研究は, 歯の移動時に引き起こされる痛みの性質を調べることを目的とし, 矯正力と同性質の荷重侵害刺激と, 性質の異なる侵害刺激として, 辺縁歯周組織電気刺激および歯髓電気刺激を用いて矯正学的歯の移動に伴う痛覚閾値の経時的変動を調べた.予備実験として, 3つの侵害刺激により31人の非矯正治療群と21人の矯正治療群について痛覚閾値の差異を調べた.その結果, 矯正治療群は非矯正治療群に比べ痛覚閾値の低下がみられた.本実験として矯正治療を開始する患者53人のなかで, 個歯の痛覚閾値の経時的変動を知る目的でリンガルアーチを装着した患者22人について, また多数歯の痛覚閾値の変動を調べる目的でマルチブラケットを装着した患者31人について, それぞれ3つの侵害刺激の方法を用いて比較した.リンガルアーチ群の痛覚閾値の経時的変動パタンは, 矯正力負荷側では, コントロール側に比べすべての侵害刺激において閾値の急激な低下がみられた.その後, 荷重刺激では矯正力負荷1日後に, 歯髓電気刺激では2日後に, 辺縁歯周組織電気刺激では, 6時間後にそれぞれ最低値を示した.その後序々に回復するものの, 30日後においてもなお完全には回復しなかった.マルチブラケット装着群の痛覚閾値の経時的変動パタンは, 荷重刺激, 歯髓電気刺激, 辺縁歯周組織電気刺激のいずれの侵害刺激においても, 負荷後1日で痛覚閾値は最低値を示し, その後序々に回復してくるが1カ月後でもなお完全には回復しなかった.以上3つの侵害刺激において痛覚閾値の経時的変動は, ほぼ同様なパタンを示したが, その最低値を示す時期はリンガルアーチ群において時間差がみられた.このことから矯正学的歯の移動に伴う痛覚の変化は, 歯根膜から始まり歯髓へと波及することが示唆された.

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