Automated Pegboard装置の信頼性と健常人の正常値について

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抄録

【目的】<BR>中枢神経障害のリハビリテーションを進める上で、運動機能の客観的評価は重要である。Automated Pegboard装置 (APB2000)は、特に上肢の運動コントロールや運動学習を客観的・定量的に測定する目的で開発された。本研究の目的はAPB2000の初回テストー再テストの信頼性を調べることと、健常人(40-59歳群)の正常値を求めることである。<BR>【対象・方法】<BR>40歳から59歳までの健常成人40名(男性14名・女性26名、平均年齢49.9±5.5歳)を対象とした。画面上に指示されたペグを被検者が21個移動させたときの各時間 Display Time(DispT):開始ボタンを押し画面の指示に従いペグを持ち上げるまでの時間 、Distance Time(DistT):ペグを持ち上げた後指定の場所に置くまでの時間、Return Time(RT):次のペグ課題をするために開始ボタンを押すまでの時間、とその合計値 Sequence Time (ST)を測定した。初回テストで左右各3回測定し、7~10日後に再テストを実施した。データの分析には、統計ソフトSPSS(10.9)を用いた。装置の信頼性は、3回の平均ST時間の初回テスト値と再テスト値を比較しクラス内信頼性係数(ICC)を求めた。健常人(40-59歳)の正常値については初回テストのデータを基に平均、標準偏差、10%、50%、90%値を求めた。また、左右・年齢の有意さを見るためにT検定を用いた。<BR>【結果】<BR>平均ST時間の初回テストー再テストのICC値は右 79・左 86であった。再テスト3回の平均値は初回テストよりDispT 約8秒、DistT 約2秒、RT 約1秒、ST時間 10-12秒減少し、それぞれ有意であった(p=<.0005)。健常人の正常値(平均±標準偏差, 10%, 50%, 90%値)はそれぞれDispT (53.3±8.6, 41.2, 52.6, 64.4)、DistT (23.7±3.9, 19.4, 23.4, 28.7)、RT(19.9±3.6, 16.1, 18.8, 25.1)、ST(96.9±13.3, 78.7, 95.6, 115.0)であった。<BR>【考察】<BR>Portney & Watkinsは、ICC値が.50以下を信頼性低度、.50-.75を中等度、.75-1.00 を高度と分類している。今回の研究ではICC値は左右とも.75以上で、APB2000テストは高度信頼できる結果であった。再テストでST時間が減少したことから、7-10日のテスト間隔ではまだ初回テストの学習効果が保持されていると考えられる。また、テストは被検者が内容を熟知した後実施したが、3回の各施行でST時間が減少しており、一定になるまでにはかなりの反復が必要と推察される。臨床場面で患者を評価する際、何回も反復テストさせることは不可能である。その為、正常値は初回テストを用い算出したが、平均値・標準偏差値だけではなく、10% 、50%、90%の範囲の提示もした方が良いことが示唆された。APB2000は、上肢運動機能の客観的・定量的評価ツールとして臨床的に有用となると思われる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2003 (0), B0700-B0700, 2004

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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