痴呆予防と運動の関係(第2報)
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抄録
【はじめに】痴呆予防は,老化や低活動状態による認知機能や動作能力の低下を防ぎ,生活機能を維持することが重要であり,その手段として,運動の有効性に関する報告が多い.前回われわれは,要介護高齢者を対象に,運動の方法としてマシントレーニングを中心とした筋力向上トレーニング(以下,トレーニング)を実施し,認知機能や動作能力への運動の好影響を報告した.そして今回,認知や動作調整などの脳機能には,前頭前野の関与が深いことに着目し,トレーニングが前頭前野機能に影響をおよぼすかどうかについて調査した.<BR>【対象】対象は,N市在住で,要支援から要介護2までの高齢者19名.年齢は70~84歳(平均年齢75.3±6.0歳)で,平成16年4月以降,同市内のデイサービスにて集団体操とマシントレーニング中心とした筋力向上トレーニングプログラムに週1回以上の頻度で参加した高齢者である.評価は,トレーニング開始時と3ヶ月後に,Mini- Mental State (以下,MMS)を用いた認知機能検査とFrontal Assessment Battery (以下,FAB)による前頭前野の機能検査を実施し,トレーニング前後のMMS,FAB得点の経時的変化を検討した.<BR>【結果】MMSの結果は,初回時が23.3±5.3点,3ヵ月後は24.8±5.1点で,トレーニング前に比べ,3ヵ月後は有意に高値を示した(p<0.01).また,FABの結果は,初回時が10.2±2.9点,3ヵ月後が12.5±3.5点で,MMS同様,トレーニング前に比べ,3ヵ月後は有意に高値を示していた(p<0.01).<BR>【考察】諸家は,痴呆の原因の一つを低活動状態による脳の廃用性とし,脳の廃用性予防には前頭前野の機能低下防止が有効と述べている.そして,Luriaは,前頭前野障害を行動の調整・決定に関わる認知機能や,運動・動作能力の障害と述べている.そして,今回,MMS,FABで捉えられた認知および前頭前野機能は,トレーニング前に比べ3ヵ月後には有意に高値を示した.この要因の一つには,トレーニングマシンを用いた低負荷で単純な動作の反復が,前頭前野へ好影響をおよぼしたと推測できた.加えて,身体機能のみならず,トレーニングを通した参加者相互の関わりと,集団活動を介した精神・心理面への働きかけも効果的であったと推察できた. 以上のことから,筋力向上トレーニングは,前頭前野の機能低下防止に効果的な手段であると考えられた.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2004 (0), E0196-E0196, 2005
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680541751168
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- NII論文ID
- 110004016139
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可