栃木県安佐地区におけるケアマネジャーの住宅改修に関する連携の現状

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抄録

【背景】当院では入院患者の退院時の住環境整備への取り組みとして,担当の病院スタッフやケアマネジャー,施工業者等の他職種同席による訪問家屋評価ならびに検討会の実施を原則として,地域における専門職の連携を進めている。その過程において,サービスの調整役であるケアマネジャーの住宅改修に関する連携の現状やニーズについて把握することが住宅改修を効果的かつ効率的に進めていく上で重要であると思われる。そこで今回,介護保険による住宅改修を例に挙げ,ケアマネジャーを対象とした住宅改修への取り組みに関するアンケート調査を実施し,安佐地区における他職種の連携の現状ならびに問題点について検討したので報告する。<BR>【方法】栃木県安佐地区(佐野市,田沼町,葛生町)ケアマネジャー連絡会に所属しているケアマネジャー112名のうち,平成16年9月の定例会の参加者69名を対象として集合調査法により実施し,即日回収した。質問票は東京いきいきらいふ推進センター(2002)が使用した自記式質問票に一部変更を加えたものを使用した。質問項目は,(1)回答者の基本属性(経験年数,従前職種等),(2)住宅改修経験の有無,(3)改修相談の経過,(4)他職種との連携,(5)改修効果の認識,(6)改修にあたっての課題,(7)改修に取り組みやすくする要件に関するものであった。<BR>【結果および考察】69名中53名から有効回答を得た(回収率76.8%)。住宅改修経験者は全体の79%であり,その内の98%が他の専門職と連携をとっていた。主な連携先(複数回答)は,施工業者(86%),PT・OT等のリハビリ専門職(57%),建築関係者(48%)であり,連携の程度については「利用者宅を一緒に事前訪問した上で改修内容の検討を行っている」との回答が施工業者や建築関係者を選択した者では80%以上を占めていたが,リハビリ専門職では62%と低かった。このことから,住宅改修に際してケアマネジャーのほとんどが他職種と連携をとっていたが,動作能力を評価するリハビリ専門職との連携の程度は,発注請負といった商業的な関係にある施工業者や建築関係者に比べて希薄な傾向が見られた。改修実施にあたっての課題と取り組みやすくする要件(ともに複数回答)については,他の専門職とのカンファレンスの必要性やリハビリ専門職との連携を望む回答がそれぞれ最も多かった。以上のことから当地区の住宅改修の現状では,ケアマネジャーは連携の重要性を認識している反面,リハビリ専門職との連携が十分でないと感じているものと思われた。その原因として,所属機関の時間的制約の問題やリハビリ専門職による理由書の作成に対して無報酬であること等により十分な事前介入が困難なこと,また医療機関所属のリハビリ専門職にとって介入機会の少ない在宅利用者の住宅改修例などが連携の希薄さとして感じられるものと推察された。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), E0205-E0205, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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