早期離床プログラムを行った特発性側弯症患者における術後1週間の疼痛の変化

DOI
  • 楞田 眞弘
    大阪医科大学附属病院リハビリテーション科
  • 建内 宏重
    大阪医科大学附属病院リハビリテーション科
  • 大野 博司
    大阪医科大学附属病院リハビリテーション科
  • 村尾 浩
    大阪医科大学附属病院リハビリテーション科

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抄録

【目的】当院においては,1999年より側弯症術後理学療法として,術後可及的早期に起立歩行を行う早期離床プログラムを継続している.術後1週間で離床していた従来のプログラムと比較しても,客観的・主観的データ上から無理なく安全に手術前の基本動作およびADLの早期獲得および在院日数の短縮が行われている.今回の研究の目的は,早期離床プログラムを行った患者における術後1週間の経日的な疼痛の変化を明らかにすることである.<BR>【対象と方法】2002年~2004年の間に後方固定術を施行された特発性側弯症患者11名(全例女性,平均年齢17.0±3.19才)を対象に, visual analog scale(以下VAS)による経日的な疼痛の変化(各動作時ではなく「一日を通しての疼痛」として回答を得た),疼痛を自覚した部位と動作,基本的動作獲得までの日数,アンケートを使用した早期離床に対する主観的な評価の調査を行った.VASは10cmのものを使用し,主観的な評価に関しては,退院時に用紙に記入可能であった8名に対して食事,トイレ,起立歩行およびプログラム全体の印象を「もっと早い方が良かった」「ちょうど良かった」「もっと遅い方が良かった」の3段階で評価した.<BR>【結果】VASの値は,術後1日目が8.7±1.59 (mean±SD) cm,2日目が7.0±2.13cm,3日目が5.8±2.13cm,4日目が4.9±1.73cm,5日目が3.8±2.13cm,6日目が3.0±2.11cm,7日目が2.5±1.62cmと経日的に低下していった.基本動作およびADL獲得までの日数は,座位が1.6±0.52 (mean±SD) 日,歩行器が2.8±1.08日,独歩が5.8±2.09日,座位での食事が2.3±0.47日,病棟トイレの使用が2.8±0.40日で獲得された.疼痛を自覚した部位は,背部全体,術創部,側胸部などで,疼痛を生じる動作としては,起き上がり,寝返り,座位であった.アンケートの結果としては,食事は8例が「ちょうど良かった」,トイレは6例が「ちょうど良かった」2例が「「もっと早い方が良かった」,起立歩行は7例が「ちょうど良かった」1例が「「もっと早い方が良かった」,プログラム全体は7例が「ちょうど良かった」1例が「もっと早い方が良かった」であった.<BR>【考察】今回の調査において,ほとんどの基本動作やADL動作は平均1週間以内に獲得された.当初,術後早期にそれらの動作を行わせることによって,疼痛が増強することが懸念されたが,ほぼ全例において経日的に低下したことから,早期の離床は必ずしも術後の疼痛を増強させるものではないと考えられた.また,アンケートから得られた主観的な評価結果ではすべての設問において「もっと遅い方が良かった」と回答したものはおらず,術後平均1週間以内に,座位,起立歩行,座位での食事,病棟のトイレ使用を行わせることに対して,患者に対する心理的負担を与えていないことが推察された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2004 (0), C0362-C0362, 2005

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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