遺体を用いた膝屈伸運動における機能解剖学的検討:―大腿骨内外顆部の動きにともなう関節包の様態―

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抄録

【目的】理学療法を行う際、的確な疼痛部位の把握や関節運動学的考察の重要性は論を待たない。そのためには機能解剖学に基づく事実の探求は必要不可欠となる。そこで今回遺体ではあるが、膝の屈伸における大腿骨内・外側顆の動きに伴う関節包の動態を観察したのでここに報告する。<BR>【対象】熊本大学形態構築学分野の遺体で、大腿骨・下腿骨・膝蓋骨を含む膝蓋腱・靱帯・関節包のみを残し、かつ可動性が充分保証されている右膝1関節を用いた。<BR>【方法】脛骨に対し大腿骨を関節包内運動に着目しながら、最大伸展位から最大屈曲位へ可動させ、それに伴う関節包の様態について、主に屈伸運動軸より後方部分の関節包について3方向から観察した。<BR>【結果】(内側からみた観察)最大伸展位では、内側側副靱帯より後方部分の関節包により強い緊張を認め、この部分の関節包線維膜の線維は前上方から後下方へ走行していた。屈曲させるに従い、内側顆部と脛骨関節面との接点はわずかに後方に移動し、内側側副靱帯より後方部分の関節包はあたかも扇子を閉じるかのような動態を示した。最大屈曲位では、後方部分の関節包は関節面接点の後方間隙内に蛇腹状に折り畳まれた。(外側からの観察)最大伸展位では、外側側副靱帯より後方部分の関節包により強い緊張を認めた。屈曲させるに従い、外側顆部と脛骨関節面との接点移動距離は内側顆のそれより長く、屈曲にともなう半月板の後方への移動も明確に確認された。この間、外側側副靭帯より後方部分の関節包は軽度の撓みを形成するぐらいであった。最大屈曲位においても後方部分の関節包の撓みは屈曲の最中とさほど変わらなかった。(後方からの観察)最大伸展位では、両側顆後方の関節包は強い緊張を示していた。屈曲させるに従い、内側顆部側の関節包の方が外側顆部側のそれよりも蛇腹の形成がより明瞭であった。<BR>【考察】膝関節可動時における大腿骨顆部関節面接点の移動距離の違いは大腿脛骨関節面の形状をはじめ側副靭帯や十字靱帯の緊張に依存しており、このことは屈曲時には脛骨に対し大腿骨が外旋するという動きになって現れる。この結果、内側顆部側の関節面接点の後方に形成される領域(大腿骨と脛骨とによって形成される凹部)が外側顆部側のそれより狭くなり、後部の関節包が強い圧迫を受けることになる。この圧迫による直接的な損傷や関節裂隙に挟み込まれる危険性を避けるため、内側後部の関節包は蛇腹の形状を示したものと考えられる。一方、外側顆部側の方は内側顆部側に比し関節面接点の後方に形成される領域が比較的広いことにより、内側顆部側ほど強い圧迫が生じにくいことと、膝屈曲にともなう半月板の後方移動より関節包が後方に押しやられることで、外側後部の関節包の撓みはさほど変化しなかったものと考えられる。

収録刊行物

  • 日本理学療法学術大会

    日本理学療法学術大会 2004(0), H1234-H1234, 2005

    公益社団法人日本理学療法士協会

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