下顎骨形態に相違が認められた一卵性双生児の 1 例

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  • A case of monozygotic twins with morphological difference in the mandibles

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抄録

一卵性双生児の下顎骨形態の不一致例を経験した.双生児の身長をはじめ頭蓋, 上顎複合体, 歯列弓および歯冠形態に高い類似性が認められたが, その一方で下顎骨形態に明かな相違を認めた.下顎枝長, 下顎骨体長および下顎角は骨格性反対咬合の認められた双生児の第二子が, 正常被蓋であった第一子を上回っていたが, 下顎枝前後径は, 第二子が第一子の80%程であった.噛みしめ時の咀嚼筋筋電図の比較では, 第二子が第一子に比較して, 咬筋の活動電位は下回り, 逆に側頭筋の活動電位は上回る傾向が認められた.一卵性双生児という点では理論上, 同一遺伝情報を有しているものと考えられる.この点を背景に両者の下顎骨形態に明らかな相違を認めたことは, 骨格性反対咬合発現に関与する環境因子を推定する資料になり得る.双生児の生活環境は通常の一卵性双生児と同様に極めて類似していたことが推測されたが, 第二子にのみアレルギー性紫班病の既往が認められた.しかしアレルギー性紫班病あるいは治療に用いられたステロイドの影響を骨格性反対咬合の発現に関与する特異的環境因子とするには現時点では不明な点も多い.また, 下顎骨形態の相違が遺伝情報の不一致による可能性も否定できないことから, この点についても意義深い症例と考えられる.

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