難治性根尖性歯周炎に関する細菌学的研究

抄録

近年,通常の歯内治療を施しても効果のない難治性根尖性歯周炎が注目されている.いくつかの難治性根尖性歯周炎の症例からさまざまな細菌あるいは真菌が執拗に検出されることが報告されているが,難治性根尖性歯周炎の原因や難治化するメカニズムについては明らかでない.本研究では,難治性根尖性歯周炎の成立にどのような細菌あるいは真菌が関与しているのかを明らかにするために,分離菌を検討した.さらに,難治化させる細菌あるいは真菌を明らかにする目的で,治療に伴う分離菌の経時的変化を検索した. 実験材料および実験方法 被験歯には,難治性根尖性歯周炎と診断した33歯を選んだ.また細菌検査時の臨床症状を診査した.細菌検査と治療は「チェアーサイド嫌気培養システム」の術式に従い,培養陰性が得られるまで繰り返した.コロニーが発育した場合その種類と数を測定し,同一と判定したコロニーを約10個ずつ採取した.コロニーは純培養性,グラム染色性および酸素要求性を決定したのち,-80℃で凍結保存した.菌株のうち,偏性嫌気性菌はAPI 20A,通性嫌気性レンサ球菌はAPI 20Strep,ブドウ球菌はAPI Staph,通性嫌気性グラム陽性桿菌はAPI 50 CHとAPI coryne,通性嫌気性および好気性グラム陰性桿菌はAPI 20 E,さらに真菌はAPI 20C AUXを用いてそれぞれ簡易同定した. 実験成績および考察 1.すべての難治性根尖性歯周炎の症例から細菌あるいは真菌が分離されたことから,難治性根尖性歯周炎は通常の根管治療では細菌あるいは真菌が排除できないことによる難治性の感染症であると考えられる.2.分離菌としてはStreptococcus,Candida,Enterococcus,Staphylococcus,偏性嫌気性菌,EnterobactorあるいはLactobacillusが単独または優勢に検出された.3.治療には「チェアーサイド嫌気培養システム」に基づく抗菌薬局所投与が効果的であり,1回の局所投与で1/3の症例で,また3回の局所投与で2/3の症例で細菌あるいは真菌が排除でき,最終的にはすべての症例で培養陰性が得られた.4.治療に抵抗した残存菌としてはE.faecalis,C.albicans,S.oralisやP.aeruginosaが優勢であった.以上のように,難治性根尖性歯周炎の成立にはさまざまな細菌あるいは真菌が関与していることが明らかになった.また,最終的にE.faecalis,C.albicans,S.oralisやP.aeruginosaが執拗に残存したことから,これら細菌や真菌の薬剤耐性のみではなく薬剤浸透を阻害するバイオフィルム形成能についても検索する必要がある.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 65 (3_4), A1-A2, 2002

    大阪歯科学会

被引用文献 (1)*注記

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001204208147456
  • NII論文ID
    10018361958
    110004092535
  • DOI
    10.18905/shikaigaku.65.3_4_a1
  • ISSN
    2189647X
    00306150
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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