CL/Frマウスにおける口唇口蓋裂発症機構に関する分子病理学的研究

  • 中澤 学
    近畿大学医学部臨床医学部門研究室(形成外科学部門)

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抄録

口唇口蓋裂のモデルマウスとして知られるCL/Frマウスは胎生期の11.5日(E11.5)前後での内側鼻隆起(MNP)と外側鼻隆起(LNP)・上顎隆起(MP)との癒合が完全に起こらないことにより口唇裂を生じる.CL/Frマウスの口唇裂を有するマウス胎仔CL(+)と正常マウス胎仔CL(-)を用いてE11.5におけるMNPとLNP・MPとの癒合を免疫組織化学的に検索した.一次口蓋形成の過程でCL(-)ではまずMNPとLNPがお互いに接触して上皮縫合(EpS)を形成する.次にその扁平上皮の一部がアポトーシスを起こし,引き続いて上皮間葉転換(EMT)によりMNPとLNPの間葉細胞の橋渡しが起こる.これに対してCL(+)ではEpSの扁平上皮にアポトーシスは見られず,それに引き続いて起こるはずのEMTも起こらなかった.Whole mount in situハイブリダイゼーションによる検索では,Claudin6 mRNAの発現先進がCL(+)のEpSの上皮細胞に限局して見られた.さらにMNPとLNPの癒合部におけるmRNA定量の結果,CL(+)ではCL(-)に比較してSlugが有意に減少し,Nogginは逆に有意に増加していた.以上の結果からCL/Fr(CL+)マウスではNoggin発現増加と関連したSlug発現低下がアポトーシスを抑制し,またEMTを起こさせないという口唇裂発症メカニズムが考えられた.

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