発作性心房細動患者における肺静脈のイソプロテレノールに対する反応

  • 元木 康一郎
    近畿大学医学部内科学教室 近畿大学医学部循環器内科部門
  • 高井 博之
    近畿大学医学部内科学教室 近畿大学医学部循環器内科部門
  • 石川 欽司
    近畿大学医学部内科学教室 近畿大学医学部循環器内科部門

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抄録

肺静脈由来の異所性興奮が発作性心房細動 (paroxysmal atrial fibrillation : PAF) の発症に関わることが報告されている. さらに最近では肺静脈はPAFの発症にのみ関与するのではなく, PAFを維持させる基質 (substrate) としても重要な役割を果たすことが示唆されている. 肺静脈の電気生理学的特性はその構造の多様さから, 興奮伝導の異方向性様式に言及したものが主であり, 自律神経系への肺静脈の関与はほとんど明らかにされていない. そこで我々はPAFの既往をもつ患者ともたない患者において, 交感神経刺激薬であるイソプロテレノール (isoproterenol : ISP) に対する肺静脈の反応性の相違を検討した. PAF患者10例 (PAF群) と非PAF患者10例 (control 群) に対し電気生理学的検査を施行. 両上肺静脈 (left superior pulmonary vein : LSPVと right superior pulmonary vein : RSPV) 及び左心房 (left atrium : LA) の有効不応期 (effective refractory period : ERP) 及び肺静脈-左房間の伝導時間を無投薬下とISP投与下にて測定した. 無投薬下において, control 群, PAF群共に各部位でERPに有意な短縮を認めなかった. ISP投与下において, 肺静脈のERPはPAF群にてLAのERPと比し有意に短縮していたが (LSPV : 120±58, RSPV : 158±32 versus LA : 191±22 ms, それぞれp<0.01, p<0.05), control 群では認めなかった. control 群とPAF群のERPの比較では, 無投薬下では両上肺静脈のERPに有意な短縮を認めなかったが, ISP投与下では, PAF群の肺静脈で有意にERPの短縮を認めた (LSPV : 194±27 versus 120±58 ms, p<0.01 ; RSPV : 205±14 versus 158±32 ms, p<0.001). 肺静脈-左房間伝導時間はISP投与後に, 最短の期外刺激時の伝導時間において, PAF群で有意に延長していた (LSPV : 125±24 versus 209±67 ms, p<0.01 ; RSPV : 106±26 versus 164±70 ms, p<0.05). PAFの患者では, 両上肺静脈におけるISPに対する感受性の亢進が示唆された. PAF患者におけるISP投与後の肺静脈内のERPの短縮と伝導時間の延長は, micro reentry の形成を容易とし, 肺静脈の不整脈源性を増強するものであり, PAFの維持に重要な役割を果たすと考えられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1571135651946136192
  • NII論文ID
    110004615534
  • NII書誌ID
    AN00063584
  • ISSN
    03858367
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • CiNii Articles

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