ヒトDNA複製因子による転写制御

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  • ヒト DNA フクセイ インシ ニ ヨル テンシャ セイギョ

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抄録

DNA複製因子であるORC(origin recogniion complex)の機能は酵母からヒトにいたるまで極めて良く保存されており、これが真核生物の細胞周期において1回だけのDNA複製を許す基盤を与えている。DNA複製因子がヒト細胞においてDNA複製以外にいかなる機能を持つかは、未だ明らかでない。本報では、DNA複製因子がDNA複製開始以外に転写制御にも関与する事実を検証する目的で、ORC2遺伝子座を相同組み換えにより改変したヒト大腸がん由来HC116(△/?)細胞におけるゲノムレベルでの発現変化を調べた。ノザン解析より、親細胞(+/+)と比較した△/?細胞におけるORC2 mRNA発現量は劇的に減少していた。DNAマイクロアレイ解析より、これら細胞間において発現変化を示した遺伝子群を同定し、ノザン解析でさらに確認した。△/?細胞では発現減少より発現増強した遺伝子が多く、ORC2がgene silencingに関与する可能性を示唆する。ORC2はオリジン結合タンパクなので、プロモーターと会合し遺伝子発現を制御する可能性がある。これを検証するため、p21WAF1/CIP1プロモーター活性におよぼすORC2の影響を調べた結果、p21WAF1/CIP1プロモーター活性は+/+細胞と隼較して△/?細胞で低く、また、ORC2過剰発現により増強された。以上の結果より、ORCはヒト体細胞においてDNA複製開始以外に転写制御に関与する可能性がある。

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