左室収縮性指標の臨床的評価

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  • Clinical Estimation of Left Ventricular Contractility

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抄録

心に器質的な異常をもたない18例(健常心群),若年健常者8例,うっ血性心筋症(CCM)35例,および本態性高血圧症(本高症) 35例を対象として,force-length-velocity関係から導かれる左室収縮性指標の臨床的有用性を検討した。まず,健常心群の force-length 関係,force-velocity関係が,若年健常者群で methoxamine を負荷して求めた両関係と一致することにより,健常心群が健常対照群として扱えることを証明した。つぎに,CCM 及び本高症における心収縮性指標を健常心群のそれと対比した。古典的指標である Starling 曲線は敏感な指標ではなく,force-length 関係(左室収縮期壁応力-左室収縮期短径;Emax)の1点観察ないし group analysis からも左室収縮性を評価することは困難であった。force-velocity関係を force すなわち左室収縮期壁応力(WS)を対数とし,velocity として mVCF を用いた片対数グラフに健常心群の回帰直線とその95%信頼限界を画き,その上に疾患例をプロットしたとき,CCM の散点の1/3は信頼限界の下にあった。また,WS が高いさいには,健常心群とCCM の回帰直線は近づき,CCMの散点は95%信頼限界内に含まれるが,健常心の WS は圧負荷時においても100g/cm^2以下であるゆえ,100g/cm^2以上の WS をもつ CCM は,健常心の95%信頼限界内にあっても左室収縮性低下をもつ可能性がある。それゆえ,force-velocity 関係は,他の指標より敏感に左室収縮性を示すと思われた。なお,本高症群では後負荷が高まっていると思われる症例でも左室収縮性の低下が明らかでなかった。

収録刊行物

  • 北里医学

    北里医学 13 (6), 456-466, 1983-12-31

    北里大学

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