本態性高血圧症における全身の循環動態と腎循環との関係について

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タイトル別名
  • Relationship between Systemic Hemodynamics and Renal Hemodynamics

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抄録

腎循環は大動脈内圧と大動脈内血流量の仕事によって維持されていると思われる。そこで,種々の循環動態を背景にして血圧上昇が起こる本態性高血圧症(HT) 122例について腎循環動態の変化を調べ,16例の健常(C)群と対比した。このさい,HTの循環動態は簡略化のため高分時心拍出量(高CO)型と非高CO型に2分した。その理由は非高CO型が潜在的ないし顕在的な末梢流血抵抗(TPR)の増加に基づいて昇圧が起こっているためである。またHTをRBFにより,I群(≧800 ml/min),II群(799〜400),III群(<400)に分けた。C群,I群に属する高CO型,および非高CO型のRBFを比べるといずれも有意差がなく,血圧および血圧の構成因子である循環動態のいかんにかかわらずRBFが一定に維持されるものと思われた。したがって,COのうちの腎分画RBF/CO比は,I群高CO型で正常よりやや低い平均値をとり,I群高TPR型では正常より有意に高い値をとった。このさい,RBF=k"P/R_Tから考えて,圧(P)の上昇に平行的にR_Tの上昇が生じRBFを保つと思われた。COとR_Tの相関性は明らかでなく,TPRが高値を示した例では同時にR_Tが高い傾向もったが,それにもかかわらずRBFが維持されていた。以上から,COないしTPRによる腎循環の支配は弱く,大動脈内圧とR_Tの関係が優位にRBFの維持に寄与していると思われた。

収録刊行物

  • 北里医学

    北里医学 19 (6), 557-564, 1989-12-31

    北里大学

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